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第81回 店舗も「プロダクトアウト」だ!

北村森の「今月のヒット商品」

店舗も『プロダクトアウト』であることが重要だ!

新年度の始まりです。皆さん、ますまずお忙しい毎日かと思います。季節の変わり目でもありますし、どうぞお体に気をつけておすごしください。

 

新年度最初のコラム、私自身が関わっている事例でとても恐縮ですが、お伝えさせてください。新しい商業施設の中にできた店舗を企画監修した案件についてです。「なんだ? 自分の手がけた仕事を『今月のヒット商品』と言ってのけるのか?」とお感じになったら、すみません。お許しください。先月の3月22日にオープンしてからここまで、来店客が当初想定を大きく超えていますので、どうかお目こぼしいただければ…。

 

私がここで綴りたいのは、「店舗も『プロダクトアウト』であることが重要だ」という話です。もちろん、新規の商業施設を立ち上げるには、周辺の人口や環境、消費者ニーズを踏まえることも大事とされていますけれど、そのうえで最後にものをいうのは、すでに顕在化している要素を超えたところでどう勝負するか、つまり、店舗の作り手から何を発信するか(ときには顕在ニーズを度返ししてでも…)が問われる、という点をお伝えしたいのです。

3月22日にオープンしたのは、四国のJR高松駅の新しい複合ビル「タカマツオルネ」です。その中の1階に位置する「shikoku meguru marche(しこくめぐる・まるしぇ)」の立ち上げに、私は企画監修として携わりました。「タカマツオルネ」を運営するJR四国ステーション開発による直営店舗です。

 

四国4県の食物販を扱うゾーンなのですが、いまから5年前のコンセプト策定の時点で、私は次のような提案をしました。

 

「四国の人も知らない四国を」

「ここをゲートに、多くの人が四国各地に足を伸ばす契機に」

 

JR四国グループが開設する店舗であるからには、ただ単に地域産品を陳列するだけに終わってはならないと考えたからです。

そもそもの原点はひとつの仮説でした。このコラム冒頭にも綴りましたが、再度書きますね。

 

「店舗づくりもプロダクトアウトであることが重要だ」

 

消費者の皆さんが思ってもいなかった店舗を新たに開設してインサイト(消費者ご自身も意識できていない真の欲求)を掘り起こすには、顕在化しているニーズに囚われることなく、プロダクトアウト思考が不可欠との判断です。

 

その背景には、理由がありました。高松市において商業の中心地は。JR高松駅から徒歩で15分程度の距離にある高松丸亀町商店街周辺です。JR高松駅の1日あたり乗車人員は1万925人(2022年度)とJR四国の駅では1位ですが、多くの消費者が買い物に訪れるのは、高松丸亀町商店街あるいは郊外のショッピングモールです。ただしその一方で、JR高松駅周辺には今後、新しい施設が相次いで登場します。徳島文理大学の新キャンパス、中四国最大級となる新アリーナ、外資系ブランドホテルなどが建設中または計画中です。

 

高松のこうした特性を考え、私たちはもうひとつの目標を設定しました。

 

「マーケットのないところにマーケットを創出する」

 

JR高松駅周辺に登場予定の施設などと連携するかたちで、手を取り合いながら、ここに新しいマーケットを創る覚悟こそが問われている、との思いでした。

オープンまでの5年間、チームで発掘したのはまず、四国で暮らす皆さんにも「こんなものがあったのか」と驚いていただける産品です。四国を文字通りくまなくめぐって、これはという商品を自費で購入(自費で買うのは、こういう局面では大事です)。そのうえで候補を絞り込んでいきました。

 

たとえば、名うての日本料理人がこしらえる、旬の魚を捌いたごちそうの干物、あるいは、里山に暮らす台湾出身の女将さんご手製の、地元で愛されるラー油、といった具合です。

 

次にリストに加えたのは、この店舗を訪れる皆さんに「やっぱりここにあったか」とご納得いただける四国の定番商品です。

 

たとえば、惜しまれつつ閉店した洋菓子店の銘菓を復活させた逸品、あるいは、手づくりに徹し続けている美味しい豆腐などです。

 

そして最後に動いたのは、「shikoku meguru marche」のオリジナル商品開発でした。これはという事業者と一緒に、たとえば次のような新商品をつくり上げました。

 

「二日酔いの朝専用ジュース」。弓削瓢柑(ゆげひょうかん)に、ポンカンをプレンドした1本です。弓削瓢柑はあまり知られていない柑橘ですが、味わいくっきりの果汁が魅力です。二日酔いのあの気だるい朝にてきめんなジュースは、地元農家が地道に育てていた弓削瓢柑に光を当てることで生まれました。

 

「アコヤ貝柱のアヒージョ」「スマのヴィンテージ缶」。アコヤ貝柱はいまでこそ高級品ですが、かつては存在感の薄い食材でした。スマもまた高級魚です。缶詰にしたのは魚体が小さいなどの理由による未利用魚です。味そのものは間違いない存在。もったいないので大事に加工しました。ごちそうの缶詰です。

 

このほか、知る人ぞ知る超実力派のチョコレート工房にも力を仰ぎました。四国のおいしい柑橘を使った「shikoku meguru marche」のためのオリジナルのショコラづくりに挑んでもらって、オープニングの特別企画を飾ってくれるように依頼しました。結果、途中で品切れ商品が出るほどの反響を得ています。

さらに…。「shikoku meguru marche」に隣接する位置に「チャレンジキッチン」と名づけたイートインカウンターをつくりました。四国4県の実力派料理人や職人たちが代わるがわるチャレンジキッチンに登場。ここを舞台に「四国の人も知らない四国」を伝えようと決めました。

 

名店の料理人や職人と何度も交渉を重ね、たとえば次のような企画を実現させています。

 

「99%の人は未体験!? 骨を全部抜き去ったハモの刺身」。食に聡い人々が大都市圏からも集う、愛媛・松山の「出汁茶漬け 網元茶屋」のご主人は、骨切りするのが当たり前とされるハモから、骨切りせずにすべての骨を抜き去ってしまう秘技を持つ料理人です。骨抜きしたハモは肉厚で奥ゆかしいまでの甘みをたたえています。愛媛県外ではまず味わえないハモ料理を、このチャレンジキッチンで提供してくれています。

 

「毎週日曜の朝は、あの寿司の名店の親方がやってくる」。香川・高松の「寿司中川」と言えば、全国からの熱烈なファンを有する超名店。その親方みずからが、毎週日曜の朝、チャレンジキッチンに登場します。親方が全力で腕を振るうのは……握り寿司ではないんです。「寿司中川」でも食べられない特別仕立ての朝ごはん。その場でこしらえるおにぎりと納豆巻き。香川の地酒もそっと用意しています。

また、「shikoku meguru marche」と通路を挟んだエリアには、香川で立ち上がったクラフトラム酒の「馬宿蒸溜所」がスタンディングバーをオープンさせています。ここはテナントゾーンであり、「shikoku meguru marche」とは別の区画なのですが、このスタンディングバーの開設を私は強く提案しました。

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