躍進する株式会社パッションアンドクリエイト社代表の豊島健太さん『日本橋蠣殻町すぎた』と食事をしていたときに、「今度、ぜひ同行して欲しいイタリアンがあるんですが、いかかがですか?」と申し出をいただいたので、ありがたくお誘いに便乗することにしました。
家に戻ると早速、いただいた店の情報を見ました。すると、驚くことに野草のお勉強でお世話になっている前回紹介しました『草喰なかひがし』の中東久雄(以下久雄さん)さんのご子息の俊文さんの店だったのです「縁は異なもの味なもの」と柳田邦夫が言っておりましたが、ほんま、不思議な気分です。
当日は札幌出張からの帰り、寒波で千歳空港は大混乱。余裕があったはずが、羽田空港への到着が30分前、電車では間に合わないとタクシーを飛ばして、ぎりぎりセーフで待ち合わせ時間の19時に滑り込みました。
店は西麻布の交差点近くの路地にあります。いかにもという場所ですので、食通の人にはわかりやすいかもしれません。狭い階段を下りると、カウンターがあります。カウンターはシェフと相対する席が四つ、反対側に着座でき4名で座ることができる席が一つあります。他、2名個室、6名個室があります。
テーブルに着くとシェフから挨拶と「店名の“erba”が草を意味して、野菜も草と…」と説明があり、蒸し焼きにした野菜が提供されます。
コースの説明はどことなく久雄さんに似ていてどこか微笑ましい。蒸した野菜の味わいは優しく、ほっとする入り方です。
続いて八寸に見立てた一口前菜が提供されます。
どことなく彼の店の雰囲気が漂います。その八寸の器のへこんだ部分に、エスプーマをまとったセコ蟹(甲箱蟹)がのせられます。
続いては、
深皿に野菜と生ハムを色とりどりあしらった皿が供せられます。そこに、生ハムの骨やくず野菜で引いたブロードとハーブをサイフォンで抽出した液体を入れます。
スタイル的にはアメリカやパリのフレンチレストランのような提供法で、食材をすべて使い切るという発想は、お父さんの久雄さんがお店でよくおっしゃる言葉で、シェフに流れているDNAを感じます。
続いてはイタリアの国旗のような赤、緑、チーズの白がきれいな一皿です。
月夜に収穫するという八ヶ岳の“Mie Ikeno”2014年のシャルドネと合わせます。
鹿のボロネーゼと続きます。ふわっと鹿の味わいが広がります。こちらも、食材を使い切るという姿勢があり、好感が持てます。
どんな料理だった思い出せない皿――多分、ひとつは大きなラビオリで、ひとつ、ふたつと続いて、
泥をまとった紅白の蕪が続きます。京都ぽいですね。
まだまだ料理は続き、
根セロリのピュレとキジハタ(確か)有機のレモンの酸味が聞いたあしらいです。根セロリのピュレとレモンの酸味が印象的な一皿です。
ここに最古の水シャテルドン。そうそう、料理に合わせて合わせる水を変えています。
で、美山在住の鹿のカツレツが出てきます。
身厚でロゼの火入れ。見るからにおいしそうです。実は昨年11月『草喰なかひがし』では炭焼きした左京区在住の鹿を食べましたが、あの鹿もとてもおいしかったですが、シェフの火入れの加減も良く、とてもおいしいです。
続いてが(確か)菜の花と蛤のリゾット。蛤は確か外房の外湾の蛤だったと思いますが、火入れがとても上手でふっくらとしておりました。そう言えば、『草喰なかひがし』ではほうれん草の根を剥いて割っている丁寧な姿勢に感心しましたが、シェフも細部にその精神が宿っているようです。
仕上げはデザート。三皿続きます。
詫びのイタリアンと言えるでしょう。その点は久雄さんのお友達の園部さんの『平八茶屋』にむしろ近いかもしれません。『草喰なかひがし』のような、鯉、銀シャリのようなわかりやすさがあるとより評価がぐぐっとあがるでしょう。ある意味つかみがないのがわかりにくさかもしれません。
まだまだシェフは若いので、『ラフィネス』の敬三シェフのように、料理もこれから大きく変わるでしょうから、その進化がとても楽しみですね。