経理分野でのAI活用法
最近ChatGPT(OpenAIが開発した人工知能チャットボット)をはじめAI(人工知能)をビジネスの様々な分野に活用しようとする企業が増えています。
経理分野においても、AIを活用して業務を大幅に効率化することが期待されています。
2023年10月からスタートするインボイス制度によって経理事務が複雑になることもあり、経理業務をAIで自動化するシステムやサービスが提供されつつあります。
そこで今回は、経理分野におけるAIの活用法について、説明します。
AIは御社の仕事にどのような影響を与えそうですか?
■AIが会計仕訳を自動化
経理部門では以前から会計システムを導入して、総勘定元帳や決算書を作成しています。
会計の仕事は、取引を判断して複式簿記によって借方・貸方の勘定科目に分類して、仕訳伝票を会計システムに入力する作業が中心です。
会計作業を担当する経理社員には、簿記の知識と経理実務の経験、そして会計ソフトの操作能力が必要でした。
現在多くの会計ソフトでは、会計仕訳を自動化するAI機能が追加される傾向にあります。
例えば、インターネットバンキングから預金明細データを会計システムに取り込むと、一つ一つの預金取引が自動的に会計仕訳形式にデータ変換されて会計処理されていきます。
新規の取引については、その都度人間が会計仕訳を設定する必要がありますが、一度登録すれば次からは自動処理されます。
また、AIには学習機能があるため、似たような取引については推測して会計処理してくれます。
会計システムの自動仕訳機能は日々進化しているので、近い将来、会計処理は全て自動化されるでしょう。
そうなれば、経理社員は会計仕訳作業から解放され、会社は会計事務のために経理社員を雇用する必要がなくなるのです。
御社の経理は会計ソフトのAI仕訳機能を使っていますか?
■AI-OCRを使って手入力を自動化
電子帳簿保存法が改正され、伝票や帳簿だけではなく、領収書や請求書などの証憑書類についても電子的に保存することができるようになりました。
紙で受領した領収書や請求書をスキャナで読み取ったり、スマートフォンやデジタルカメラで撮影したりして、画像データとして保存することができます。
紙の書類を画像データ化するときに利用すると便利なのが、OCR(光学式文字認識)機能です。
領収書や請求書をスキャンして、日付、金額、取引先名、消費税率・税額等の文字データを抽出してデータ化します。
このOCR機能に人工知能が付いたAI-OCRが普及しつつあります。
すでに数百万件の領収書や請求書をスキャンして学習することにより、文字認識率は大幅に改善されています。
クセのある手書き文字は正確に読み取ってもらえませんが、印刷された数字に関しては90%以上の精度で認識されます。
金額をデータ入力するのが仕事である経理にとって、AI-OCRは強い味方になることでしょう。
これまでどこの会社でも経理社員は、紙の書類や伝票を見ながら、手でパソコンのキーボードを叩いてデータ入力作業をしていましたが、今後はAI-OCRが肩代わりしてくれます。
御社の経理社員は毎日何時間入力作業をしていますか?
■面倒なインボイス作業はAIにお任せ
2023年10月から消費税のインボイス制度がスタートします。
経理では、すべての領収書や請求書にインボイス番号の記載があるかどうかを確認しなければならなくなります。
さらに、記載されているインボイス番号が適正な番号であることを「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」で検索して確認することが要求されています。
これらのインボイスに関する作業を経理社員が毎回手作業でするのは、大変なことです。
インボイス制度により経理が判断する項目が増えて、消費税の会計処理も複雑になるので、判断ミスや入力ミスは確実に増えるでしょう。
そこで、会計システムや経費精算システムでは、領収書や請求書をAI-OCRでスキャンしたデータをもとに、AIがインボイスを判別処理したうえで、会計仕訳に自動変換する機能を準備しています。
このように、インボイス制度によって煩雑化する経理事務の問題も、AIが解決してくれるでしょう。
御社の経理は、インボイス制度にどのように対応するつもりですか?
■経理事務はAIで効率化を図る
今回は、経理分野におけるAIの活用法について、説明しました。
ポイントは次の3つです。
・会計仕訳はAIで自動処理可能
・AI-OCRを使えば手入力作業は不要
・インボイス制度もAIで効率的に対応
現在では、中小企業でも高度なAI機能がリーズナブルな費用で利用できます。
一方で、経理事務に高騰する人件費を支払い続けるのは、経営的に得策ではありません。
大量の定型処理はコンピュータが得意ですので、人間でなくてもできる作業はAI化して自動化していきましょう。
経理社員には、給料に見合う業績管理や財務管理に専念してもらいます。
社長としてはこれから、人間がする仕事とAI化する仕事の判断を間違えないようにしたいものです。
近い将来、どの仕事をAIに任せられそうですか?