ここ最近、電器店の店頭でも報道でも、「4Kテレビ」が話題です。
本連載 第22回、『4Kテレビの活用と将来性』(2013年6月)では、4Kテレビの基礎知識がご紹介しましたが、当時はコンテンツ不足が懸案事項でした。その後、第34回『「4K撮影」のススメ』(2014年7月)では、4Kテレビの高精細の画質力を活かす方法として、ユーザー自身による4K撮影のメリットと最新ムービーカメラ製品をご紹介しました。
しかし、4Kテレビの普及を後押しする本命は、やはり「放送の4K化」です。産業界もユーザーも、その行方に注目していることでしょう。
今回は、最新のコンテンツ・インフラの業界動向を整理し、筆者の視点で分析を加えました。最も支持される4Kプロバイダーとは?
■業界動向全般
まず、業界動向全般を整理しましょう。
電波を利用した放送では、CS衛星による4K試験放送の開始が記憶に新しいところです。2016年には、本格的な放送に移行するとの情報もあります。
また、つい最近、2020年に予定されていたBS衛星での4K放送を、2016年に前倒しするとの報道がなされ、ますます活気づいてきました。
ケーブルテレビ網や、インターネットを利用したテレビ放送(IPTV)および、VOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスも、実証実験が開始されています。
テレビの4K/8K化は国策として、総務省およびNexTV-F(次世代放送推進フォーラム)からロードマップが示されていますが、放送事業者、通信事業者、機器メーカーなどが一丸となり、オールジャパン体制で、日々前倒しが検討されているようです。
■有力な4Kコンテンツプロバーダーは?
CS衛星による「スカパー!」は、いち早い試験放送の開始で注目を集めていますが、受信には専用のパラボラアンテナが必要と、敷居が高い感は否めません。独自で趣味性の高いコンテンツを制作し、それぞれに関心の高いユーザーに対して、有料放送を行うことになりそうです。
BS衛星放送は、既に電波が受信可能な世帯が3800万とも言われています。現在BS放送が視聴できるご家庭なら、専用チューナーを追加するだけで4K放送が視聴できる可能性が高く、また今後、テレビにも4K対応のBSチューナーが内蔵されると、公共的な4K放送の普及に大きな弾みがつきそうです。
そして、今、筆者が最も注目しているのは、インターネットを通じた配信です。インターネット接続は、もはや、電気やガスと同等に、不可欠なインフラとなりつつあります。また、無線や有線を問わず高速化技術が発達し、その柔軟性と伸びしろにも期待できます。4K映像の大容量データを伝送し、将来の8Kを見据えると、インターネット回線による配信が主力になるかもしれません。
具体的には、NTTぷららが、高速光回線による「ひかりTV 4K」の伝送試験を開始していて、10月にはVOD(ビデオ・オン・デマンド)の商用サービス開始を予定しています。規格が厳密に規定される放送とは異なり、身軽なインターネットサービスが先行する一端が見えます。
■さいごに
動きをまとめると、2016年に4Kの本格放送が始まり、時期を同じくして8Kの試験放送が開始。2020年には、8K放送の本格放送が開始される見込みです。
電波による放送は、視聴者がいくら増えても送出側の負担は増えず、安定性が高いのも特徴です。一方、規格を厳密に規定するため、サービス開始までに時間が掛かったり、新しい技術の導入が難しいものです。一方でインターネットを使ったサービスは、各社が独自にサービスを提供でき、新しい技術にも柔軟に対応できるメリットがあります。しかし、4Kや8K映像の膨大なデータを安定して伝送するには、通信回線をもっと増強する必要があります。
今後は、4K化、そして次の8K化に向けて、さらなる高効率な映像圧縮技術や、高速伝送技術が現れると考えられます。衛星放送かインターネットか。変化に追随するという意味では、筆者は、インターネットを利用した放送やサービスが有利と考えています。
鴻池賢三