■「ハイレゾ」でオーディオ業界が復調の兆し!
本連載、『第21回「オーディオブーム」が再来?!』では、近年のヘッドホンブームを切掛けに、コンパクトで良質なオーディオにも注目が集まっている状況をご紹介しました。
メディアでは、老舗オーディオブランドの撤退や統合などが報じられる一方で、新たな潮流が、新しいユーザーを掘り起こしつつあるのは間違いないようです。
そしてその後、オーディオに新たなトレンド「ハイレゾ」が加わり、マニアを中心に盛り上がりを見せ、ここ最近は、新聞やテレビなどでも目にする機会が増えました。
この「ハイレゾ」とは? 今回は、「ハイレゾ」の解説に加え、具体的な楽しみ方をご紹介します。
■「ハイレゾ」とは?
オーディオの「ハイレゾ」とは、High Resolution Audio (ハイレゾリューション オーディオ)を略した呼称で、音楽CDよりも高密度な音、言い換えると、CDよりも音が良い音源や、それらの音源を再生できるシステムを指します。
(「ハイレゾ」の定義に関する詳細は、Phileweb「日本オーディオ協会、“ハイレゾ対応機器”の定義を発表」で詳しく解説されています。)
少し難しくなりますが、技術的には、音声(アナログ波形)をデジタル方式に変換する際、主流のPCM方式では、サンプリング(標本化)と量子化と呼ぶ作業を行います。
CDはサンプリング周波数が44.1kHz、量子化ビット数が16bitで、これは、元となる音声の波形を、1秒間あたり44,100回の頻度で採取して、その時の音の大きさを65,536段階 (16bit)で記録するというものです。
一方のハイレゾは、CDよりも密度を高めたもので、例えば96kHz/24bitの場合、サンプリングは約2倍の96,000回に、音の大きさは16,777,216段階(24bit=2の24乗=16,777,216)にと、16bitの256倍もきめ細かくかくなります。
端的には、元の音の波形を、デジタルでもより忠実に記録や再生できるようになることで、音質が向上するのです。
■ハイレゾ音源を手に入れる。再生する。
「ハイレゾ」を楽しむには、まず、ハイレゾ音源を入手する必要があります。ディスクメディアでは、DVDをベースにしたDVD-AudioやSACDがありますが、再生には専用プレーヤーが必要と敷居が高く、普及には至っていません。ブルーレイ映画や音楽は、ハイレゾで収録された作品も多くあり、リーズナブルな価格で、対応プレーヤーやアンプを入手することができます。
そして今、話題なのが音楽配信。ハイレゾ音源をインターネット経由でダウンロード購入できます。購入した音楽データは、PCで再生ができ、USB-DACと呼ばれる、PCから出力したデジタル音声をアナログに変換する装置を接続すると、「ハイレゾ」クオリティーで、音楽を楽しむことができます。
「ハイレゾ」自体は新しいものではありませんが、PCを核に、手軽に扱えるようになったのが、昨今の「ハイレゾ」ブームの始まりと言えます。
■ハイレゾ音源配信サイト
ハイレゾ音源はいくつかのサイトで入手可能ですが、日本でメジャーな曲を扱っている大手は、以下の2つが代表的です。
1. e-Onkyo music (http://www.e-onkyo.com/music/)
国内外の人気アーティスト作品も多数ラインナップ。宇多田ヒカルなどポップスから、ジャズ、ロック、クラシックまで幅広く網羅。
2. Mora[ハイレゾ] http://mora.jp/index_hires
ソニー系列の配信サイト。マイケル・ジャクソンが人気。国内外アーティストの作品も多数。
■ハイレゾ再生システム・機器
ハイレゾを楽しむシステムにはい、くつかのパターンがあります。ユーザーが重視するポイントに応じて、柔軟に選択が可能です。
1. 最も手軽! PCに接続するスピーカー
【製品例】
ブランド: ECLIPSE TD 型番: TD-M1 (http://www.eclipse-td.com/products/td-m1/)
USB-DACおよびアンプなど、必要な機能を全部内蔵したスピーカー。PCとUSBケーブルで接続して「ハイレゾ」が楽します。
また、WiFi内蔵でiPhone/iPod/iPadの音楽も手軽に聴くことができます。
音質の良い、コンパクトで良質なシステムで、筆者も愛用しているおすすめの製品です。
2. マニアに人気!ネットワークプレーヤー
【製品例】
ブランド: パイオニア 型番: N-50
主にNAS(ネットワーク上のHDD)に蓄積した音源を、LAN経由で再生するプレーヤーです。お手持ちのオーディオシステムに接続することができます。USB-DAC機能も搭載しています。
所有するスピーカーやアンプが生かせるので、オーディオマニアに人気です。
■さいごに
ハイレゾを楽しむための機器は、その他にも、いろいろな形態があります。選ぶのは大変ですが、それもオーディオの楽しみです。
また、最近では、ハイレゾに対応したスマートフォンやポータブル音楽プレーヤーも登場しています。iPhone/iPod/iPadに接続してハイレゾが楽しめる「ポータブルアンプ」など、マニアックな製品も人気です。
かつてもてはやされた、重厚長大なオーディオとは様変わりしましたが、「ハイレゾ」がもたらした新しいオーディオブームは、今後も広がりを見せそうです。趣味の方も仕事の方も、是非「ハイレゾ」に注目を!
鴻池賢三