「モノは売れない、人は集まらない」という実感を訴える経営者も少なくない。
しかし。仕事の現場の最前線では嘆いてばかりはいられないので、歯を 食いしばって必死に商売に打ち込んでいる人も多い。
結論は景気の良し悪しに左右されないだけの商売のあり方を模索しながら頑張っているといってもいい。
食べ物屋の商売も競争が激しく厳しい時代になってきている。開業したから繁盛するとは限らない。
そういう中で、毎日の工夫とやる気で集客を高め繁盛しているところも少なくない。
外食業界に挑む若手の経営者の一人が有限会社東京フードサービスの鈴木則行社長(38歳)である。
鈴木氏は大学を卒業後、中堅企業の営業マンで5年間活躍。
「飲食業をやりたい」という長い間の夢と志を持ち、居酒屋チェーンで2年半の修行後、
30歳で脱サラして居酒屋(東京・高田馬場「とことん」)を開業。
この7年間で3店もの居酒屋(東京・池袋に2店舗)を経営している。
2004年11月にオープンした「炭市場どんどこ西池袋店」は大きな暖簾が下がった大衆酒場である。
串焼きをメインにした料理メニューのほか、スタッフが創意工夫しながら独自のメニューを提供する。
焼酎も鈴木オーナーとスタッフが「美味しい」というものメインに集めて出している。
鈴木社長は「やる気のあるスタッフ(社員もバイトも)で接客、料理や酒も少しでも美味しく飲めるようにアイデアを出し合って
提供しています。手作りのメ ニュー、益子焼きのグラス、くつろげる照明、ちゃぶ台など、いい雰囲気を演出しています」という。
この店が繁盛している一番のカギはスタッフのやる気である。
鈴木社長は社員、アルバイトを問わず、「あなたって作業員?それとも仕事人?」と呼びかけている。
例えば、お客が店に入って注文を受ける時、呼ばれて注文を受けてから動くのは“作業”という。
呼ばれる前にこちらから積極的に話しかけ、注文を促すことを“仕事”と明確に分けている。
「先を見て行動する人こそ仕事人です。うちのスタッフには仕事人になれ、と檄を飛ばしています。単純な作業をする人を
求めていません。接客、料理をつく ること、すべて自分たちがプロ意識を持って運営している自覚が一番大切です」
(鈴木社長)
また、鈴木社長は来店したお客さんに対して喜んでもらえるサービスを徹底している。
店からの押し付けのサービスではなく、お客の立場にたって提供される “ささやくような”サービスを心がけているという。
同社の居酒屋経営は「均一化した居酒屋を嫌い」「すぐ飽きられるような店作りを避けている」からこそ、
自分たちで作っていくという社員(アルバイトも含 む)の参加型経営を目指している。
「作業員ではなく、仕事人たれ」が鈴木社長の現場での口ぐせである。
社員のやる気が伝わってくる元気な雰囲気を持つ繁盛居酒屋である。
上妻英夫
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