焼酎から清酒、梅酒など活発な商品開発を展開する酒造メーカーの一つが和歌山県海南市に本拠地を置く、中野BC株式会社である。5年前から「カクテル梅酒」の商品開発に着手し、ヒットを飛ばしている。梅酒部門の売上げは、5年で25倍の成長カーブを描いている。1年で4種類、5年で20種類以上の商品開発を続けている。
同社は創業が昭和7年、当初、醤油の製造販売から始まり、焼酎を手がけたのが昭和24年。ついで、清酒(昭和33年)と製造メーカーを続け、現在、年商36億円、従業員200人の中堅企業で多彩な顔を見せる元気な企業である。昭和42年にはみりんの製造販売にも進出、ブランド「宝来」を販売し続けている。平成14年に、中野酒造(株)、富士食研(株)、紀州ワイン(株)を合併統合して、中野BC(株)と出発している。
同社は「衆知をもって常に創造せよ」を掲げ、経営理念に「手の届きそうな夢を持ち、技術・研究・開発で世界に通ずるニッチトップのモノづくりを目指す」としている。具体的には、社員の1割が同社の研究所の所属し、絶えず、商品開発に取り組んでいる点が、多様な商品開発の原動力になっている。技術者集団をイメージする企業である。
商品開発の先頭を走っているのが中野幸治専務(35歳)で、現社長が中野幸生社長(70歳)で二代目、三代目を引き継ぐ使命を持った人物である。大学を卒業後大手の酒造会社で酒造りと販売手法を4年間学んだ。現在、マーケティング戦略と経営戦略、人事を担当している。中野専務は梅酒の開発と同時に、蔵人の長である杜氏を兼務する立場になり、更に徹底したモノづくりを目指している。
同社のドル箱の商品「カクテル梅酒」は従来の感覚にとらわれない手法で開発した商品が目立つ。地元の果物であるブルーベリーやイチゴ、ハッサク、ジャバラ(柑橘系果実)を使った梅酒や、地元名産の山椒を使った商品、国産のゆず、シークァーサーを使ったもの、7種類の野菜と梅酒をかけ合わせたものなど、従来の梅酒のイメージとかけ離れたものが多い。
中野幸生社長は「企業も人も、変わらなければ捨てられる」が口ぐせ。現場を回りながら、ベテラン、若手を問わず、「オマエ、変われよ」と激励に走り回っている。同社は酒造メーカーとして、酒造事業を柱に、富士食研事業部では、梅果汁、梅エキス、青みかん加工食品(栄養機能食品)、化粧品など、機能性食品や化粧品などの事業も展開している。
上妻英夫