アメリカンフットボールの日大対関西学院大の定期戦での悪質な違反タックルプレーをめぐる騒動は、試合から二週間以上経ったが、収まるどころかさらに拡大している。
一連の経緯をみると、“加害者”側の日大のあまりにも稚拙な危機管理対応が火に油を注いでいる。
問題のプレーが起きたのは、5月6日。日大選手が、プレーが中断したあと、気を緩めた関学大の選手に背後から強烈なタックルを行い全治三週間の大怪我を負わせた。
試合後も日大側から関学側に謝罪はなく、内田正人・日大監督は、会見も行わず雲隠れした。関学側は12日、「どうしてあんなプレーが起きるのか。(監督からのラフプレー指示の有無も含めて)日大側は説明すべきだ」と怒りもあらわに記者会見したが、日大側は沈黙したまま時間が過ぎた。
危機管理の第一原則は、不法行為が明るみに出た場合、直ちに調査して非があれば、いち早く認めて謝罪することだ。それが組織、企業のダメージを軽減する鉄則だが、日大はその原則を無視した。
19日にようやく姿を見せた内田監督は、被害者と両親に謝罪したが、「監督指示の有無」は曖昧なままだ。記者団に取り囲まれた監督は、「すべての責任は自分にある」として、真相を隠したままで監督辞任を表明したが、「それなら、やめりゃいいんだろう」という、男らしさを誤解した開き直りにしか映らない。
騒動を見ていて、だれかワンマン監督を諌める存在がチーム内、大学内にいないのかという疑問がふつふつと沸いてきた。
学生スポーツの監督はとかくワンマンとなりがちだ。監督という立場に基づく選手、チームへの絶大な支配力を自分の人間力と誤信しがちだ。しかも、内田監督は大学理事会の常務理事(人事担当)でもある。こわくてだれも誤りを指摘することができない。まさに裸の王様である。
時間が経てば批判もしぼむと思っているのか。逆なのだ、危機管理においては、時間がかかれば、問題は拡散し組織のダメージはより一層拡大する。
今回のアメフト騒動を見ていて、「森友・加計問題」で混乱を繰り返す昨今の政局を重ね合わせざるをえない。批判に対する対応は、嘘をまじえてのらりくらりと小出しにし、時間稼ぎに終始する政府。その間に疑惑は膨らみ、一年以上に渡り国政は停滞を続ける。
「安倍一人勝ち」と呼ばれ、党内、官僚の人事権を掌握する安倍晋三首相ワンマン体制のもとで、「牽制、忠告すべきナンバー2」のシステムが機能していない。そっくりだ。
さて、政府における重要なナンバー2といえば、女房役ともたとえられる官房長官だ。次回から、史上に名を残す名官房長官の危機管理対応の技を見ながら、