こんにちは!
1位づくり戦略コンサルタント
佐藤元相(さとう もとし)です。
埼玉県秩父市に地域密着で業績を伸ばしている葬儀会社
株式会社むさしのは、ハード面で劣るなら、ソフト面で補えばいい。
大手に劣る部分は、すべて人の力で上回ることができることを証明してくれます。
いつも考え、いつも工夫
大手葬儀会社は広い駐車場を確保しています。
会場の数が多く、広いので、それだけ参列者の数が多く、
駐車台数も多さが求められます。
一方、むさしのは、広い駐車場とは言えません。
はっきり言えば、狭い。
ところが、むさしのを訪れるお客から、
駐車場に関して不満の声は一切聞こえません。
その理由を、「駐車場が狭いからです」と
高橋さんはこう言います。
「大手は駐車場が広いので、駐車場の係がいません。
お客さんが好きなところ停めていいわけです。
でもうちは狭い。
狭いから、どうしても駐車場係が必要です。
「こちらにどうぞ、バックオーライ」と、僕が言うのもなんですが、
うちのスタッフは一生懸命、誘導するんです。
お客さんが車を停めたあと、「受付はあちらです」とか、
葬儀のあと帰るときも、「お気をつけて」などと声をかけ、
誘導して駐車場から一台一台、スムーズにお帰りいただくんです。
その対応が、『むさしのさんの対応はいい』とか
『むさしのさんの駐車場は停めやすい』などと評価していただけるんです」
また、むさしのの葬儀ホール入口は、自動ドアではありません。
従業員のなかには「自動ドアにするのが顧客サービスであり、
お客さまの満足度が上がるのでは」という意見を述べる人もいます。
しかし高橋さんは、自動ドアにはしません。
お金をかけて自動ドアにするのが望ましいサービスとは考えません。
「お客さんが来たら、開けてあげればいい」と言います。
お客にとって、ちょうどいいタイミングでドアを開けてあげる。
その際、あいさつや案内など声をかけることもできる。
その対応のほうが、お客は気が楽で、
満足もするのではないかと高橋さんは言います。
一事が万事。
他社と比べて劣っていると思われること。
費用をかければもっと便利になると思われること。
そんな発想や意見がでたときがチャンスです。
高橋さんは、いつも、いつも考え、工夫しています。
葬儀会社でも笑顔が大事
「うちの会社にはマニュアルはないんですか?」
スタッフの一人がある日、高橋さんに尋ねたそうです。
うちのような仕事、うちのような小さな会社にマニュアルは必要ない。
そう思っていた高橋さんですが、
「基準となるものはあったほうがいいかもしれない」と考えなおしました。
どんな場面でどんな行動をすべきか、
会社としての標準、基準をつくる作業を進めてきました。
「人には個性があり、それぞれ違う良さを持っています。
しかし、ちょっとしたことで理解や解釈が異なると、
お客さんにとっては満足不満足がわかれます。
たとえば、電話は鳴ったらすぐ出るべきという人がいれば、
2回でとったほうがいいという人もいるし、
3回くらいでとったほうがいいという人もいます。
お客さんがいろいろだからといって、
こちらの対応もいろいろでいいとは思いません。
ガチガチに規定するのではなく、
様々な場面で、自分で判断できるほうがいい。
その判断の基準、お客さんに対する最適の行動基準を
決めることにしました」
むさしののスタッフを見ていて、
一般的な葬儀社と違うなと感じることがあります。
むさしののスタッフは笑顔でいることが多いということです。
「葬儀会社だからといって、笑顔をひかえる必要はないと思います。
電話に出るとき、声は低めにする必要もないと思います」
と高橋さんは断言します。
お客の声にヒントがあるように、スタッフの声にもヒントがあります。
正社員に限らず、パート社員も一緒に勉強できる場を、
高橋さんはつくっています。
営業地域を絞ってはじめて1位かどうかがわかる
秩父市をはじめとした秩父地域は、1市4町から成り立っています。
秩父市と横瀬町、皆野町、長瀞町、小鹿野町の4つの町です。
埼玉県のおよそ4分の1の面積に、人口は約10万人。
面積は24パーセントに達しますが、人口は1.4パーセントしかありません。
この1市4町のうち、むさしのは3町での実績がありません。
秩父市と小鹿野町の1市1町でしか仕事をしていないのです。
「この地域では年間1000人くらいの方がお亡くなりになりますが、
当社は300人ほどの葬儀を執り行っていますので、
占有率は30パーセントほどになります。
1市4町全体での占有率を上げようとは考えていません。
3町には手をつけません。
看板すら出しません。
範囲を絞って1市1町だけで占有率を上げる。
むさしのが運営する会場はまだ一杯ではありませんから、
稼働率を上げるには地域を絞るのが最善と考えたのです」
範囲を決めてはじめて占有率を導く母数が出ます。
そのなかで自社の目指す中心客はどれだけに相当するか。
むさしのは地域戦略の原理原則に忠実に経営を続けています。
「地域に貢献」を行動で示す
「地域のみなさんのおかげで仕事ができます」
高橋さんは、いつも地元に感謝の気持ちを忘れません。
むさしのは、決して無理せず地域に喜ばれる取り組みをしています。
たとえば、「マイクロバスの無料貸し出し」。
少年野球やサッカーチームの遠征に、バスを無料で使ってもらうのです。
あるいは、お茶菓子など会館で大量に使うものは、
地元の養護施設で作っているものを優先的に採用しています。
さらに、法事の返礼品などは地場のものを勧めています。
「返礼品って、カタログから選ぶスタイルが増えてきましたよね。
たくさんの中から選ぶことができるのは便利ですが、
カタログに載っているものは大手メーカーの商品が多いですよね。
全国どの地域でも通用する品物を提供するには、
大手に頼らざるを得ないということでしょう。
でも私としては、地元のものを利用したいし、地場のお店を利用してほしい。
地域に住んでいる人たちも、地域で仕事している人たちも、私たちもみんないい。
そういう三方よしが成り立つのですから」
営業活動とは思い出してもらうための活動
高橋さんは地域を思い、地域の人の役に立とうと
従業員全員で日々努力しています。
しかし、人間は忘れるもの。
過去にむさしのとの接点があっても、時間が経てば忘れてしまいます。
よって自社を思い出してもらうための活動が必要です。
むさしのが全従業員でおこなっていることは、
お客に忘れられないための活動、
お客に思い出してもらうための取り組みと言えます。
「このお店にまた来ようと思うお店と、
後日、そのお店の前に来ても素通りしてしまうお店があります。
どこへ行こうかな…と考えたとき、すぐ思い出すお店と、
かなりあとになってから、ああそうだ、そういえばあの店もあったなと
思い出す店があります。
割引クーポンがなくても行きたいお店があれば、
クーポン券があっても行きたいと思わない店があります。
私は、いつかお願いしなければならないときは、
ここの人たちにお世話になりたいと思っていただける会社、
すぐ思い出していただける会社、
割引しなくても利用していただける会社になりたいと考えています」
そのために、大手がやらないことをやり、
同業他社とは異なることに一生懸命取り組む。
まさにランチェスター弱者の戦略を原理原則通り、地道に実行しているのです。
つづく
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