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戦略・戦術

第二十六話 紹介・リピート率が8割を超える 小さなガーデニング会社から学ぶ経営の原則①

中小企業の「1位づくり」戦略

顧客対応力を高める
 

 株式会社幸泉は三重県鈴鹿市にある外構・造園会社です。

 

 同社が受注する工事の7割以上は、お客からの
紹介もしくはリピート受注によるものです。

 

 残りの3割が大手ハウスメーカーの下請け工事
という構成になっています。

 

 一般的に外構・造園会社は、
ゼネコンやハウスメーカー、工務店など建設会社から
下請けの形で受注する割合が高いのが実態です。

 

 幸泉は個人客からのリピート受注をはじめ、
親戚の紹介、隣近所の紹介、友だちの紹介など
個人から個人への紹介が多いという特徴があります。

 

 同社の強みは、エクステリア工事、造園工事の
設計・デザイン力が高く、施工品質が高いことはもちろん、
職人の顧客対応レベルが高いことが挙げられます。
 

 そこまでお客に支持される会社に育て上げることができたのは、
「会社を継ぐつもりがなかった」2代目社長の孤軍奮闘によるものです。
 

 当時、設計事務所に勤め、住宅やマンションの設計をしていた田中さんは
「父が継いでもらいたそうだったので」退職。
29歳で家業を手伝い始めました。

 

 現場に出て思ったのは、職人さんと設計する人との意識の差が
これほど大きいのかということでした。



 現場で尊重されるのは、とにかくいい仕事。
正しくつくる、美しくつくる、きれいな現場をつくること。



 それ以外の時間を守るとか、あいさつをするとか、

マナーに気をつけるといったことは軽視されているように見えました。
職人さんは、「いい仕事をすれば評価してもらえる」と考えています。


 しかし、お客さんが評価するのは、「いい仕事をする」は大前提です。
職人さんのマナーがいいか、あいさつはきちっとしているか、
礼儀正しいかといったことが評価の対象となり、
紹介やリピートなど選ばれる理由が大きく存在すると考えていました。


 お客さんの視点と職人さんの視点が全く違うのです。
現場がきれいにおさまるのは当然のことです。
顧客対応を改善し、レベルアップしなければと痛感しました。

 

 そこで最初に取り組んだことは、現場で直接お客さまと接点のある
職人対応のレベルを高める仕組みをつくることからでした。

 田中さんは、お客さまに
「好かれて、気に入られて、喜ばれて、忘れられないようにする」
ための取り組みを始めること求められると考えました。


 しかし、最初の1年間くらいは、職人さんたちと言いあいになりました。
社長の息子とはいっても、肩書きはまだ主任。
それでも田中さんはひるみません。


 お客さまに高い評価をいただくには、現場での顧客対応が
大きな要因であると信じていたいからです。
 

 経営改善で一番効果性の高い取り組みは顧客対応です。
この取り組みは、お金もかからず、今いる人たちだけで、
業績を伸ばすことができる最善の方法だと考えても間違いありません。
 

 対話は経営の生命線

 多様化した時代に、トップの考えを押しつけるような指導のやり方では、
思考の範囲が浅く狭くなりがちです。

  また、上司から与えられる指示に応えるような仕事のやり方では、
いくらたっても人の能力は高まりません。

「言われた事をただする」
ではなく、
「自分で考えて行動をする」

 

  現場の人たちは自ら考える力を持っており、
その力を引き出すのが対話なのです。
対話からは、働く人たちの経営に参加意欲が高まり、
自発的な行動や意見が生まれるのです。



 営業をはじめ、現場職人や営業事務、会計係など業務の垣根を超えた対話は、
チームみんなで仕事のあり方を改善することができるのです。

 

 対話で期待すべきことは、自分と考え方の違う人たちと
コミュニケーションをすることで、
自分の考え方と他者との考え方の違いに気づき、
考えや行動を変える可能性が秘められているのです。

 

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