【意味】
為政者の持っている徳が人民から評価され、その徳を以て政治を心掛けるならば、北極星を中心に群星が回るように、民はその為政者の徳を慕い付いてくる。
【解説】
辰とは星の意から、「北辰」とは北極星のこと。
北極星は、北天に在って不動の位置を占めるため、北の空の群星は北極星を中心に回転しているように見えます。このため徳を以て周りに人々を集める為政者と類似する姿に例えられ、掲句のように使われます。
掲句の「徳」とは様々な意味がありますが、一般的にはその者の道徳的人格の魅力です。この魅力は自分から評価して誇示するものでなく、その者の日々の品性行動が自然に周りから理解されて「道徳的な魅力」として評価されます。そのためこの徳の魅力は人々を惹きつけ教化力となり、為政者が活用すれば人民から尊敬されて慕われ、無理のない政治が行われることになります。これを「徳を以てする政治」と云います。
徳性を育てる方法としては、一般的に「陰徳行」と「陽徳行」があります。
陰徳行は、世間に隠れてこっそり善行を積み重ねることです。なぜ隠れての徳行かと云いますと、一つは徳行という善行(人助け行為)の押し売りをしないことからです。助けられた側はどうしても負い目を感じますから、可能な限り助けた側の存在を隠したい配慮からです。もう一つは周りの善行賞賛や自己の善行満足感などから、自惚れに陥らないための配慮です。本来の修行は慎独修行(独りでの慎み深い修行)が基本ですから、徳積修行も可能な限り目立たないでする考え方からです。
「陰徳ある者は、必ず陽報あり」(淮南子)とあります。お天道様が必ず見ていて下さるから「人知れずの善行」も安心して行いなさい。そうすれば必ず朗報が来るということです。
これに対して陽徳行は、人前で善行を積み重ねること、つまりお手本の行動を取ることです。筆者が提唱している『百万人の心の緑化作戦』や主宰する『人間学読書会』では、陽徳の文字を解体して「太陽のような明るい心で、一日に14の良い行いを、人前で堂々と続けること」と説きます。そしてゴミ拾い行・明るい挨拶行・仁眼長所行などの「周りへのお手本行動」を、恥ずかしがらないで堂々と実践します。
『百万人の心の緑化作戦』とは、人心の砂漠化を防止し人心緑化の世界を実現するためのボランティア運動です。まず①『人間学読書会』で徳行実践の生き方を学び、②この生き方レベルを身に付けた人々を100万人に増やし、③この100万人が更に120人ずつの徳行実践者を増殖し、そして④日本国民1億2000万人の心の緑化を実現しようとする運動です。
とは申しましても、現在までの活動歴33年間・読書会開催は450回で、延参加者は53,000人です。このペースでは100万人に達するまでには600年を要しますが、主宰者レベルの意識の指導者が10人育ってくれば、10分の1の達成年数に短縮されますから、希望を持っています。