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人間学・古典

第35講 「言志四録その35」
耳を以て人の言を聞くことなかれ。

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学

【意味】
耳だけで人の言うことを聞くな。上辺を聞くのではなく、心で聞くべきである。


【解説】
掲句を読書に置き換えてみますと、「目だけで 書物を読むな。上辺を読むのではなく、心で読め」となります。
巧みな言葉表現を用いれば全てのことが表現できそうに錯覚しますが、現実の文章による伝達には様々な制約があります。
単語数の制約・書き手の表現力・読み手の読解力などが壁となりますが、
これらを乗り越えるには「心で読む力=洞察力」が重要になります。


学園のA君から、「なぜ、洞察的な読解力が必要でしょうか」と質問されました。
なかなか難しい質問ですので、次のような問答をしました。

  (杉山)君には好きな彼女がいるか?
  (A君)います。
  (杉山)君は言葉だけで、彼女に君の想いの全てを伝えられるか?
  (A君)携帯で話をし、会った時には手を握り、肩を抱き・・・・・・。
  (杉山)オノロケは不要です。言葉の伝達力の限界をカバーするのが洞察力であるから、この点を考えてみなさい。

室町時代の浄土真宗の中興の祖である蓮如上人(1415~1499)の言葉に
「本尊は掛け破れ、聖教は読み破れ、と対句に仰せられ候」とあります。

本尊とは、通常信仰の対象としてお寺に安置する仏像をいいますが、浄土真宗では
『南無阿弥陀仏』の六字の名号(掛け軸のようなもの)が掛けられます。
聖教とは名号を解き明かしている聖典です。これらが破るほどに掲げ、破れるほど読めということです。


浄土真宗において、蓮如上人は開祖の親鸞聖人と並び賞さるほどの大切な人です。
蓮如上人が生まれたのは、親鸞聖人の死後150年ほどたってからです。
当時の本願寺本堂はわずか18畳ほどで、上京した門徒が失望して同じ真宗の仏光寺へ参拝したほどの寂れようでした。

そんな本願寺の法主(第8代)に就任したのが蓮如43歳の時です。
その後は様々な弾圧にあいながらも、浄土真宗の中興の祖という評価を得ています。

蓮如の人生に最も影響を与えた言葉は、6歳の時の母の言葉です。
「児の御一代に聖人の御一流を再興したまえ(あなた一代で親鸞聖人の教えを世間に広めなさ い)」と。

幼児の蓮如にとって、この言葉を耳から理解することはできなかったと思います。
しかし母の遺言は彼の胸に刻まれ、後にどれほど心の中で繰り返されたか想像しがたいものがあります。
このような理解も「耳だけで人の言を聞くな!」の類であります。

 
 
杉山巌海

第34講 「言志四録その34」鶏鳴いて起き、人定にして宴息す。門内粛然として、書声室に満つ。前のページ

第36講 「言志四録その36」平生便用するところの物件は、撫愛して毀損することなかるべし。次のページ

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