今、教育産業は来るべき2018年問題への対応で必至だろう。大学進学率の増加でなんとか横ばいだった見込み客もいよいよ右肩下がりになりはじめる時期に入る。それが2018年問題だ。
もちろん、その予兆として、外食産業でも学生アルバイトの確保が基本的に難しくなっている。これがあと数年でもっと深刻になるはずだ。ここで、“基本的に”とか、“はずだ”と書いたのは、私にはごく一部の人が集まる経営者が身近にいるからに他ならない。この点については、1月に出版した書籍にゆずることにしよう。
私は、少子高齢化による生産年齢人口の激減が始まった2010年ころから、近い将来におこる人材難に備えた店づくりをすることを唱えてきた。それが功を奏している会員もいるだろう。
さて、本コラムの本題に入ろう。少子高齢化を見据えた2010年ころから、私は蕎麦業態に着目し始めた。私が蕎麦に注目したのは私自身が蕎麦のおいしさを理解するようになったからだろう。若いころの私は、もりそばを大盛りないしは二枚食べないとお腹がいっぱいにならない、そんな蕎麦屋のイメージを持っていたので、蕎麦業態自体、魅力を感じていなかった。しかし、年と共に一枚の蕎麦を食べてお腹がいっぱいになり、蕎麦を味わうようになったのだ。
これは私に限った話ではないだろう。よく、第二の人生として蓼科や那須など高原リゾートに蕎麦屋を開業する人がいる。これは、中年になって蕎麦のおいしさに目覚めたからなのだと思う。しかし、実際、手打ち蕎麦で店を成り立たせるのは難しく、趣味と割り切ればいいものの、売上を期待して商売をすると失望するに違いない。
富士見高原というスキー場に『そば花鳥野(はなどや)』という蕎麦店がある。
スキー場の蕎麦というと、伸びきった茹でおきの蕎麦でおいしくないイメージが多くの人にはあるだろう。しかし、こちらの蕎麦はうまい。そのせいもあってか、年中無休のこちらの店はスキー場が営業しない時期でもお客様を集めているようだ。
私は、まず、敬愛するレビュア“TOMIT”の食べログ前情報を見た。それによると、「メニューには手打ち蕎麦とそうでない蕎麦のメニューがあったが、お願いすれば全て手打ちに変更も出来るとのこと」らしい。
一見するとスキー場にこの手の外観の店があると、いけていない雰囲気に見える。だからか、あるいは蕎麦屋ゆえ長居できない空気を感じたのか、はたまた、自身の利用動機に合わないと感じたのか、二階にあるカフェテラスの食堂ほどお客様の入りが良くないような気さえする。
今回は、天ざる蕎麦と唐揚げ蕎麦を注文した。
まず、天ぷらが到着した。この天ぷらが、サクミがしっかりあって揚げ加減自体もとてもうまい。ある程度の天ぷらを提供する店はあるが、「おおっ」と思う天ぷらを提供するのはとても難しいと思うがこちらは違った。値段を考えても特殊な材料を使ってはいないと思うのだが、海老や野菜などありふれた材料の天ぷらがかなりうまい。
そして、下に隠れている百合根の天ぷらが存在感を放っているが、これがまたうまい。テーブルにある抹茶塩で食べると格別で、天ぷらのおいしさを実感させる。
ざるの蕎麦は香りもあり、?のコシも私の好みだ。ざるタレは少し甘目ではあるが節の香りが口に広がりうまい。確かにこの蕎麦をスキー場の食堂で食べられると考えると奇跡の蕎麦屋と言える。
唐揚げ蕎麦の麺は手打ちではなく、二八蕎麦のようだ。確かに、十割だと切れたりするし、場所柄ファミリーが多いため丼に蕎麦が長く留まるので、その点を考えるとむしろいい。
手打ちのうまい蕎麦を扱いながら、そしてクォリティの高い天ぷらを提供しながら、現実的な経営をされていることがとても参考になった。
そば処 花鳥野(はなどや)
長野県諏訪郡富士見町境広原 富士見高原スキー場 レストハウス 1F