日本においては、代替療法といえば、健康食品やサプリメントを思い浮かべる方が多いかもしれません。
アガリクス、プロポリス、ローヤルゼリー、コエンザイムQ10などなど…。どこかで聞いたことありますよね。でも、健康食品やサプリメントは、「代替医療」という広い分野の一角を占めるものに過ぎないんです。
セラピストや、心理カウンセラー。
米国では、企業の役員ともなると、専属のセラピストやカウンセラーがついていると言います。ジムに通ってカラダを管理するように、ココロのケアも、しっかり行うということですね。
これは、まだ日本ではあまり考えられないことですね。日本ではまだ、カウンセリングやセラピーに通っているなんて言うと、世間体が悪いなどと見られることも多いですから。
でもこれが、マッサージ、鍼灸、整体、カイロプラクティックに通っているということならどうでしょう? カラダをケアするという意味で、定期的に通う人は多いのではないでしょうか?
できれば信頼できる先生のもとに通って、カラダを管理するとともに、ストレスについてもケアの仕方を学ぶ。
施術の時間は、先生との会話の時間でもありますから、世間話だけでなく、「あなたのカラダのクセ」や「カラダに表れるココロのクセ」などを話し合うと、これだけでずいぶんとストレスの緩和になったりします。
鍼灸は国家資格です。しかし、鍼灸師は資格を取ったあと、優れた師匠について実践を学んでからでないと一人前になれないと言われます。「気」を扱う仕事ですから、人間的にも器が大きくないと務まらないんですね。
僕は、かつて鍼灸会の重鎮と言われる先生方を取材したことがありますが、それはそれは感銘を受けました。技術というより、その人間的な魅力にです。
これぞ治療家、これぞ人間研究の哲学者。
そんな鍼灸師のもとに通うことができたら、カラダ面だけでなく、ココロの面でも大きな恩恵を受けることができると思います。
整体は、代替医療の分類では、ボディワークに位置づけられることも多いのですが、日本にはかつて、整体の巨星ともいうべき人物がいました。
野口整体を創始した野口晴哉師です。単なる健康法の枠を超えた哲学ともいうべき野口整体。この思想の影響を直接・間接に受けた整体師は非常に多いと思います。
整体に通うなら、「野口晴哉って、知ってます?」と聞くのが、その整体師の腕を問うのにいい試金石になると思います。
ところで、ボディワークとは何かというと、これは手技(しゅぎ)や体操・運動を通して、身体から意識に働きかけるメソッドの総称です。
有名なのは、カイロプラクティックですよね。アメリカでは政府が公認している大学があるくらいですが、日本では国家資格にまではなっていません。
またアメリカでは、カイロプラクティックと同等に、いやそれ以上に知名度の高い手技療法があります。日本ではあまり知られていませんが、オステオパシーと言います。
オステオパシー医科大学という大学を出なければ資格が得られないほどの厳しい教育を受けます。もし、日本でアメリカのオステオパシー大学を出た人に出会えたら、それこそラッキーだと思って下さいね。
ほかにも、欧米伝来のボディワークには、クラニオセイクラル・セラピー、ロルフィング、ヘラーワーク、アレクサンダー・テクニーク、フェルデンクライス・メソッド、エサレン・ボディマッサージなど、数多くの技法が日本に紹介されています。
これらはカラダを解きほぐすと同時に、ココロの緊張を解きほぐす、心身相関療法であるという共通点があります。
もしお近くで、いずれかもでも看板を掲げているサロンがあれば、ぜひ一度、施術を受けてみてほしいと思います。「ああ、まさにココロとカラダがつながっている」ということを実感できるはずですから。
さて、では、もう少し進んで、断食(だんじき)やヨガなどはどうでしょう?この辺になると、やや宗教がかってくる感じがしますね。
でも、伝統医療(中国医学やチベット医学、インドのアーユルヴェーダなど)がそうであるように、もともと病気の治療や予防医学などは、宗教(ココロの教え)と密接な関係があったのです。
石原東京都知事や、数多くの国会議員、かの渡部昇一先生も通うことで有名な、伊豆のヒポクラティック・サナトリウムという断食施設があります。
ここを主宰する石原結實先生は、多くの著書も著しており、東洋医学と西洋医学を統合する、まさしく古くて新しい医学を実践するドクターですが、断食(実際には先生が開発したニンジンジュースは飲める)の効果は、単なる健康増進だけでなく、その人の「能力開発」にもつながる、ということを指摘されています。
人のカラダの消化活動は、思わぬほどの莫大なエネルギーを消費しています。断食は、その消化のエネルギーを最小限に抑えることで、ふだんエネルギーが枯渇気味な免疫力、細胞レベルの新陳代謝、脳の活性に十分な力を回せるという効果があるのです。
断食は、独自でやると危険なことも多いので、しっかりしたプログラムのもとでやることが大事です。脳の能力開発、カラダの能力開発のためにも、一度は体験して見られると、自分の本来の能力に出会って、びっくりするかも知れませんね。
ヨガ(ヨーガ)は、インド伝来の伝統的な健康増進の体系です。最近では、ホットヨガなど、エアロビクス化したものが登場していますが、本来のヨガとは瞑想(めいそう)と切っても切り離せないものなのです。
ヨガのポーズを通して、そのポーズを通して得られる心境(ココロの安寧)を体感するというのが、ヨガの本来的な目的。
日本ではこれも巨星であった沖正弘師の沖ヨガが有名です。ヨガ道場では個人指導というのはあまりなく、グループによる指導と、それを家庭生活で実践するというのが主な形です。
いかに生活をヨガ化するかというのがポイントになります。そういう意味では非常に修業的な感じもしますが、純粋にココロとカラダの自由が得られるという点で、ほんとうに優れた方法だと思います。
家庭生活に取り入れるという点では、アロマセラピー、ハーブ療法は、手軽でよいかも知れませんね。今は、アロマも、ハーブもちゃんとした学会や協会もでき、そこで資格をとったアロマセラピストのお店やサロンも、ご近所に1件や2件はあると思います。
アロマセラピーのポイントは、アロマセラピストに個人の体質や性格などを相談し、あなたに合ったアロマを選んでもらい、ライフスタイルに取り込むという点。
僕の知り合いに、日本人の体質に合ったアロマの組み合わせを研究している方がいますが、そうした研究熱心なアロマセラピストに出会えると、たかがアロマとは言っていられないくらいの効果を享受(きょうじゅ)することができます。
アロマやハーブも入れると、代替療法には本当に数多くの種類があります。「代替療法で、セルフケア!」といっても、代替療法には、いったいどんなものがあり、怪しいものにだまされないためには、どんな情報収集の仕方あるのか?
僕が主宰している「自然治癒力学校」では、代替療法の種類を知り、いかに自分にあったものを選んでいくかといった内容の講座も開催していますが、各療法の歴史、主旨、安全性を確かめた上で、最後に重要になってくるのは、やっぱり利用する側の主体性なんですね。
さまざまな代替療法があると言えども、結局は、人と人との交流。それを実践する人と、それを受ける人とのマッチングがもっとも重要なんです。
今、医療機関でも多くの代替療法が注目されはじめ、「統合医療学会」もできて、EBM(効果・効能・安全性への医学的証拠)の学術研究も進んでいます。
国会においても、超党派の国会議員による「代替医療を考える議員連盟」が結成されており、代替療法を医療現場に取り入れていこうという動きが、医学的にも政治的にも活発になっています。
日本においては制度上の問題がひっかかって、代替療法そのものが大きく普及していくのはまだまだ時間もかかるでしょうが、それでも代替療法の活用は、時代の流れです。
受身の健康から、主体性の健康へ。主体性ある健康は、主体性ある人生の証拠です。自らの主体性をもって選択していく、というのが代替療法の味噌なんですね。
僕が尊敬する上野圭一先生は、『補完代替医療入門』 (岩波アクティブ新書)『代替医療 ~オルタナティブ・メディスンの可能性』(角川oneテーマ21)などの著書を通じて、代替療法活用の意味と方法を提供してくれています。
これからのセルフケアの時代に必携の本ですので、ぜひご一読をお奨めしておきますね。代替療法については、海外の状況など、たーくさんの情報がまだまだあります。
あなたの知らない代替療法の世界、またの機会をお楽しみに。