奥様を金庫番にしてほしくないのです。
中小企業において、社長の奥様が金庫番、というケースが少なくありません。
特に地方ほど、多いように感じます。奥様も金庫番としての自意識の強い方が多く、“私がしっかりと会社の財布を守らないと。”という気持があだになってゆきます。
その結果、良からぬ金融商品に手を出してしまうのです。
なかでも怖いのが、いま問題になっている仕組債のような、金融派生商品、いわゆるデリバティブ商品です。
十分な金融知識もないのに、「利回りが他の商品よりも高く、持っているだけで運用益がたまりますよ。」等という銀行員の言葉に、多くの社長夫人金庫番がだまされてきたのです。
利回りがいいのは、ハイリスク・ハイリターンだからです。
「どうしてそんな危険な商品を買ったんですか?」と、社長夫人の金庫番に聞いたことがあります。
「そうなのよねぇ、銀行員があまりにも熱心だったのよ…。」との返事でした。
銀行にとっても手数料が高く、担当銀行員の点数も上がるのです。銀行員が必死に売り込んでくるのは、当たり前なのです。
その姿をみて、“あれほど熱心に頑張っているんだから…”という妙な母心で手を出してしまうのが、社長夫人金庫番の良くないところです。
結局、“情”で動いてしまうのです。
その結果、ハイリスク・ハイリターンなので、急激に円安になった、円高になった、どこかの銀行が倒産した、といった環境変化が来れば、一撃でハイリスクの渦中に陥ります。しかもそのような商品にはほとんど、損失を確定させるデッドラインが設定されています。
「これ以上損失が大きくなる前に、現状の損失をいったんここで確定させましょう。」などと銀行は損失処理を迫ってきます。
そうなってからでは、遅いのです。
しかもこのようなことが、取締役会もなく、社長夫人金庫番の独断で行われていることが多いのです。恐ろしいこと極まりないのです。
だから、奥様を金庫番にしてほしくないのです。