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第94回 別府温泉(大分県) 世にも珍しい「地獄めぐり」と「泥湯」

高橋一喜の『これぞ!"本物の温泉"』

■世界遺産級の源泉地帯

 別府温泉の観光名所といえば、やはり「地獄めぐり」は欠かせない。地獄めぐりとは、自然湧出する温泉の源泉(地獄)をめぐる別府観光の定番コース。


 地獄は8カ所からなり、コバルトブルーの湯が美しい「海地獄」や湯が乳白色に白濁する「白池地獄」、赤色に染まった湯が世にも珍しい「血の池地獄」、数十分の間隔で100℃超の熱湯が勢いよく噴き上がる間欠泉「龍巻地獄」など、多彩な温泉の姿を見せてくれる。なお、これらの4つの地獄は国指定名勝である。

 初めて別府の「地獄めぐり」を体験したのは、筆者が20代前半で、温泉にハマり始めて間もない頃だった。当時は、正直に言うと「へぇー、すごいな」程度の感想しかもたなかった。真っ赤に染まる血の池地獄を見ても「血と言うほどは赤くないじゃん」と軽口を叩いていたのを覚えている。


 しかし、全国3000以上の温泉をめぐってから再訪した「地獄」の印象は一変した。これほどさまざまな特色をもつ源泉や全国的にも貴重な間欠泉が、市内の狭い範囲に密集していることの奇跡に感動するしかなかった。血の池地獄のような見事な赤色をした温泉は、日本にいくつもないことも今だからこそわかる。


 別府の地獄は、あまりに気軽な観光スポットとなっているがゆえに実感しにくいが、地球のエネルギーの多様性を実感できるスポットだ。地獄を含めた別府温泉の量と質、そして固有の温泉文化は、世界遺産に登録されてもおかしくないと、本気で思っている。

 

■入浴できる泥湯

 国指定名勝にはなっていないが、もうひとつお気に入りの地獄がある。灰色の熱泥が湧きだす「鬼石坊主地獄」だ。ボコッボコッと泥が沸騰する様子が坊主頭に似ていることから名づけられたという。大地が呼吸しているのを視覚的に実感できる。


 じーっと坊主地獄を眺めていると、「この泥を体に塗ったら気持ちよさそうだなあ」と思わず妄想が広がる。坊主地獄にかぎらず、他の地獄の湯も「つかり心地はどうなのだろう」と考えてしまうのは、温泉好き特有の「病気」かもしれない。足湯の施設を見ても、全裸で浸かりたいという衝動に駆られてしまうから困る……。


 別府には、そんな温泉好きの願望をかなえてくれる温泉施設もある。鬼石坊主地獄から車で数分の距離にある「別府温泉保養ランド」では、天然の泥湯を楽しむことができるのだ。


 別府温泉保養ランドは、別府八湯のなかでも特に硫黄の含有量が多く、乳白色に濁った湯が特徴の明礬温泉に位置する。もともと施設のあるエリアは「紺屋地獄」と呼ばれ、『豊後風土記』にも記載されているほど古くから湧き出ている。

 

■天然の泥パック風呂

 内湯にも男女別の湯船があるが、もっとも大きい開放的な露天風呂(混浴)は、100人以上が一気に入れそうなサイズ。見た目にも濃厚な灰色の湯で満たされている。


 泥湯が堪能できる温泉施設としては、日本最大である。なお、混浴とはいえ、湯が濁っているうえに、湯船には目隠しとなる塀があるので、女性でも入浴しやすいようだ。


 温泉と一緒に湧きあがってきた灰色の泥を湯船の底からすくって体に塗ってみる。硫黄臭が香る泥は意外とキメが細かく、スベスベとしているので肌にもよさそう。まさに天然の泥パックだ。


 隣で泥の塗り合いっこをするカップルを横目に、体だけではなく、顔にも泥を塗っては日光浴をし、また温泉に浸かって泥をぬりたくる。


 「こんな貴重な泥湯を体験できるチャンスはめったにない!」と嬉々として別府温泉を満喫することになるとは……温泉にハマる前の20代の筆者は夢にも思っていなかった。

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