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健康

第34回 峩々(がが)温泉(宮城県)「飲める温泉」こそ本物の名湯!

高橋一喜の『これぞ!"本物の温泉"』

■温泉は「飲む野菜」
 温泉の湯口のそばにコップが置かれているのを見たことがあるだろうか? コップに温泉を注ぎ、ゴクリと飲み干す。飲泉(温泉を飲むこと)は、温泉めぐりをする楽しみのひとつである。
 
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 (写真はイメージです)
 
 ミネラルなどの温泉成分を含む温泉は「飲む野菜」といわれる。昔から、さまざまな病に効能があるとされていて、たとえば貧血には含鉄泉、便秘には二酸化炭素泉が効くという。
 
とくに、ヨーロッパの温泉地では飲泉が盛んだ。もともと高温の温泉が日本より少ないという事情もあるが、入浴と同じくらい普通の感覚で温泉が飲まれている。医療行為の一環としてのステータスを得ている温泉地もあるくらいだ。
 
 だが残念なことに、日本では、飲泉はそれほどメジャーな存在ではない。保健所の許可などが必要なため、日本では飲泉のできる温泉はかぎられる。経験から言えば、全国の温泉施設のうち飲泉ができる施設は2割以下ではないだろうか。
 
 飲泉ができるということは、温泉の質が高い証拠でもある。本物かつ新鮮でなければ、温泉は飲めないからだ。だから、飲泉のできる温泉は、ほぼ間違いなく入浴しても気持ち良い。飲泉ができるかどうかは、良い温泉を見極めるためのひとつのモノサシになると言っていいだろう。
 
■循環濾過の湯は飲めない
 一方、循環濾過をして湯を使い回している温泉は、衛生上もちろん飲めない。塩素などの薬剤が混入しているから、体に害を及ぼすことになる。
 
 昔、ある温泉施設で、ショッキングな体験をした。明らかに湯口からは循環濾過した温泉が注がれているにもかかわらず、一人のおじいさんが、おもむろに湯口の湯を手ですくって飲みはじめたのだ。
 
「その温泉は飲まないほうがいいですよ」と指摘したのだが、おじいさんは「わしは、いつもこの温泉を飲んでるんだ。だから、こうして健康でいられる」と胸を張る始末。その後も説得を試みたが、結局、理解してもらえなかった……。
 
さて、日本にも飲泉で有名な温泉地がいくつかあるが、宮城県にある峩々(がが)温泉も名湯のひとつ。宮城と山形を結ぶ蔵王エコーラインから、横道にそれた場所にある一軒宿で、まわりは山々に囲まれている。まさに「秘湯」の佇まいだ。
 
 玄関を入って驚くのは、そのモダンで洗練された雰囲気。フロント前にある「談話室」には、秘湯の宿とは思えないほどセンスの光るテーブルやイスが並び、本棚にはバラエティーに富んだ蔵書が収められている。山の宿では珍しくない暖炉も、オシャレなインテリアのような存在感を放っている。
 
■日本三大胃腸病の名湯
 一方で、温泉を重視する湯治文化を現代に継承しているのも、峩々温泉の魅力だ。談話室の片隅には飲泉所があり、いつでも温泉を飲める。実は、峩々温泉は「日本三大胃腸病の名湯」として知られる。
 
コップ一杯の温泉をごくごくと一気飲み。無味無臭の透明湯で、まったくクセがない。苦みや酸味が強烈な湯も面白いが、やはり飲泉をするなら飲みやすいほうがいい。峩々温泉の湯は、水代わりに気軽に飲めるほどだ。
 
宿泊者用の大浴場には露天風呂もあるが、お気に入りは、木のぬくもりあふれる内湯。10人以上が入れそうな「ぬる湯」の湯船には、透明で肌によさそうなしっとりとした湯が満たされている。
 
 もうひとつの「あつ湯」の湯船では、峩々温泉伝統の入浴法「かけ湯」を体験できる。湯船のそばに横たわり、湯を胃や腸の部分にかけるのが峩々温泉流。幸いなことに、他に入浴客がいなかったので、床に横になり腹に湯をかける。本来は100回繰り返すのが習わしらしいが、数回湯をかけては、じっと目をつむる。うっかり眠ってしまいそうな心地よさだ。
 
 温泉で胃と腸を刺激したせいだろうか、急激に空腹に襲われた。夕食のご飯とお酒が進んだことは言うまでもない。
 

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