■営業と組織の問題が解決すれば、経営上、社長の悩みの90%は吹き飛ぶ
第1回コラムでは、会社の現時点における営業力を最大化するために、2つの重要な問題提起をしました。
社長が抱える経営上の悩みを90%解決するための問題提起であり、1つは、現有戦力をお客様作りに向けて最大限活かしきることの本質的な意味について、もう1つは、会社が保有する経営資源と業績への影響度についてです。
第2回コラムでは、それを現場で実践するためのヒントをお伝えします。
創業30年~50年以上続いてきた会社では、その長年の蓄積により潜在的な営業力が眠っている反面、業界慣習や長年の業務習慣により惰性やムダが存在しています。まず、現有戦力を活かしきるためには、その惰性やムダを把握するところから始める必要があります。
この惰性やムダは、営業部門はもちろん、営業マンも行っていますが、実は社長自身にも存在しています。全員営業というからには、社長が、実際に営業活動をする訳ではなくとも、密接に関係するのです。
経営に影響する要因とそのバランスを、わかりやすく数字で表すと以下のようになるというのを前回お話しました。
「人≒営業・組織」で60%
「物≒商品・サービス」で30%
「金=財務会計」で10%
では、社長自身の思考のエネルギーや、1ヶ月の時間の使い方はどのようなバランスになっているでしょうか?
エネルギーとなると単純に数字で表せないものであるため、実感値でよいのですが、経営計画や売上の上下にとらわれて、営業の具体的なテコ入れや、各組織がどう動いているかの把握が、多少なりともおろそかになってはいませんでしょうか?
いや、それをするのは担当の管理職だからといっても、何もかも任せてしまうと、社長の仕事は書類の確認や決済が仕事の中心となってしまい、営業現場やお客様から離れてしまうことに輪をかけて、それは自分の手でやることではないからという意識に陥ることで、営業や商品についての情報収集や新たな発想が生まれにくくなってしまいます。そうなると、経営における意思決定や施策立案そのものが、段々と鈍ってしまいかねません。
社長業は意思決定業といわれるように、中小企業においては、会社全般に関わる重要事項は、基本的に社長に集中します。ゆえに、仮に社長自らトップ営業をしない会社であっても、やはり営業上の意思決定を的確に行うための目に見えない仕組み(ここでは意識作り)は必要になってくるのです。
しかし、社長に対して、情報収集が足りないとか、時間の使い方がなってないなどと言う人は、社内で誰一人いません。それだけに、会社の営業力を最大限活かすには、自らが自覚するしかないのです。
さて、新年の目標は立てても、自分の意識面や時間の使い方を意識したり、確認したことは過去にあったでしょうか?。
もし、ここ数年、役員会議や営業会議で、素晴らしい意見や提案が出たことがないというならば、今までと同じように、それが出てくるのを待つよりも、まず当面は、自らが新たな知見を生み出す方向へ一歩動いてみるということが、実はやろうと思えば最短でとりかかれる方策ともいえるのです。
社長および会社規模によっては役員クラスまでは、上記のようなことを意識し、実践することにより、今までとは違う新しい発想や、会社全体の方向性をもたらすことへつながります。
一方、営業部門の管理職とスタッフにおいては、組織全体というよりも、どうしても現場仕事の範囲のことが中心であるため、まず手をつけるのは『意思決定<現場の動き』となります。
ゆえに、現在の営業の動きは適性なのかどうかを1時間単位かあるいはもっと細かく把握し、検証することで、新たな営業力を発掘できます。また、商品・サービスの説明の内容や焦点の当て方が妥当かどうかも確認し、見直すことも重要です。
しかし、理屈の上で、営業時間と効率を増やすことや、商品・サービスの理解度を上げることが重要といっても、必ず営業現場からは「今の仕事で手一杯」という話が出てきます。また、会社によっては、ここ数年来、既存のルート営業が中心だったため、営業部門だけで考えても、どこから手をつければいいかわからないという場合さえありえます。
そういった状況や難題に対して、いままでと同じように“とにかく、営業部門だけにがんばらせる”ことでなんとかしようとするのでなく、社長の“全員営業”という意思決定により、他部門の協力支援も含めた動きを会社として許可することで、会社の経営資源と全体意識をお客様側にシフトすることで、従来の営業部門のみの営業体制ではできなかった営業の余力や、今までにない新たな工夫を作り出せる組織体制にしていくことが、“全員営業”の現場サイドにおける実践につながるのです。
【今回のポイント(〆の一言)】
営業部門だけを、がんばらせて上がるのは売上でなく交通費。経営の原因と結果をつなげるには、経営者自身の意識付けと会社組織との連結が重要である。