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採用・法律

第90回『インターネット上の誹謗中傷に関する対応の変化』

中小企業の新たな法律リスク

顧問弁護士である賛多弁護士は、建設業を営む野田社長からインターネット上の誹謗中傷に関する相談を受けています。

* * *

野田社長:以前は大変お世話になりました。インターネット上の誹謗中傷について大変勉強になりました。

 

賛多弁護士:お役に立てたようで何よりです。

 

野田社長:その件で、また同じようにインターネット上の口コミサイトに匿名で悪口が書き込まれていて、本日は相談に参りました。こちらの資料を見てください。

 

賛多弁護士:これまたひどい内容ですね。以前と同じような対応を想定していますか?

 

野田社長:はい、そうですね。これらの書き込みの削除、損害賠償請求、告訴等の対応をしていただきたいと考えています。以前ご相談した際に、プロバイダ責任制限法についてご教示いただきましたよね。

 

賛多弁護士:そうですね、ご説明させていただきましたね(第37回参照)。今回、このプロバイダ責任制限法が改正されて、改正法が2022年10月1日から施行されているんですよ。

 

野田社長:そうなんですね、どのように改正されたのですか?

 

賛多弁護士:以前ご説明はさせていただいていますが、改正前は、細かい手続や申立ての内容は別にして、

①コンテンツプロバイダ等に対して発信者情報開示請求を行い、IPアドレス、タイムスタンプ等の情報開示を受ける。

②IPアドレスを元に特定したインターネットサービスプロバイダ(アクセスプロバイダ)に対して発信者情報開示請求を行い、発信者(プロバイダ契約者)の情報開示を受ける。

という手続を行う必要がありました。そのうえで、発信者である加害者に対して損害賠償請求をするために裁判をするということで、3回も裁判手続をしなければなりませんでした。

 

野田社長:そうでしたね、覚えています。非常に手間がかかる手続でしたよね。

 

賛多弁護士:これが、今般の改正で、発信者情報の開示請求を1つの手続で行うことを可能とする手続が新設されました。今までの手続は訴訟手続として行っていたのですが、新しい手続は非訟手続として行うもので、訴訟手続に比べて、手続自体が簡易に設計されていて、様々な面で利用しやすくなるよう改正されました。これによって、以前の手続に比べて、簡易に、また、迅速に手続を行うことができるようになりました。なお、今までの手続も利用することができますので、どちらの手続で行うか選択することもできます。

 

野田社長:1つの手続の中で行うことができるというのは分かりやすくていいですね!

 

賛多弁護士:また、従来開示請求の可否の判断が分かれていたログイン時のIPアドレスやタイムスタンプについて、改正によって開示請求が可能であることが明確になるなど、開示請求を行うことができる範囲が見直されて明確になりました。ただし、開示を可能とする範囲を広げすぎると、逆に通信の秘密やプライバシーを侵害することとなるおそれが発生してしまうため、ログイン時情報といった特定発信者情報については、開示請求できる場合が限定されています。

 

野田社長:開示の対象がより分かりやすくなり、加害者の特定も容易になったということですね。

 

賛多弁護士:そうですね。また、以前ご説明した際に、時間的な制約があるというお話をさせていただきましたが、時間的な制約があること自体に変わりはないのですが、今般の改正で、必要とされる通信記録保全のため、裁判所による開示命令までの間、裁判所による提供命令及び消去禁止命令を出すことが可能となり、手続を進めている間に記録が消去されてしまうような事態を防ぐこともできるようになりました。

 

野田社長:今回も色々とご教示いただきましてありがとうございます。勉強になりました。

 

賛多弁護士;それでは、今回対応が必要となっている事案のご説明をお願いいたします。

* * *

昨今のインターネット上の誹謗中傷に関する問題は深刻な社会問題となっており、侮辱罪の厳罰化や相談窓口の設置・積極的な周知など様々な対策が講じられています。

 

自身が誹謗中傷をする側にならないよう注意する一方で、被害者となってしまった場合には、問題解決・改善のため専門家に相談したり、相談窓口に意見を求めてみたりし、一人では抱え込まないようにされてください。

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 鵜飼 剛充

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