menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

健康

第83回 松川温泉(岩手県) 大地のエネルギーを肌で感じる乳白色の湯

高橋一喜の『これぞ!"本物の温泉"』

■日本は世界有数の地熱大国

 脱炭素の実現に欠かせない再生可能エネルギー。太陽光や風力などの自然エネルギーとともに注目されているのが地熱発電である。


 地熱によって生まれた天然の水蒸気でタービンを回し、電力を得る仕組みだ。太陽光や風力と比べて安定的な発電量が得られるだけでなく、日本のような火山国では熱資源も豊富にあるため、一部で大きな期待を集めているようだ。


 ちなみに日本は、アメリカ、インドネシアに次ぐ世界3位の地熱資源をもつにもかかわらず、地熱発電は国内の総発電量の0.2~0.3%を担うに過ぎないといわれる。


 地熱発電とは切っても切り離せない関係にあるのが温泉である。火山活動による地熱エネルギーが豊富なエリアには、当然のことながら温泉も豊富に湧いている。だから、現在稼働している地熱発電所の多くは、温泉地の近くに位置しているケースが多い。


 そのひとつが、岩手県の岩手山と八幡平の狭間、標高800メートルの山あいに湯けむりを上げる松川温泉だ。周囲をブナやナラの原生林に囲まれた自然豊かな温泉地で、5軒の温泉宿が営業している。

 

■開放感いっぱいの露天風呂

 温泉街と目と鼻の先に建つのが、1966年、日本初の地熱発電所として運転が開始された松川地熱発電所。世界でも4番目に古い。白い水蒸気がもくもくと上がる、高さ46メートルの巨大な冷却塔が目印だ。


 この発電所で得られた熱は温泉宿の暖房として利用され、温泉は麓の東八幡平温泉に引き湯されているという。


 松川地熱発電所から最も近い距離に位置するのが、松川温泉「峡雲荘」。私が20年近く前に宿泊したいときは、素朴な山の湯治宿といった風情が印象的だったが、現在はかつて駐車場だった場所に立派な新館が建ち、女性にも喜ばれそうなモダンな雰囲気の宿に生まれ変わっている。


 温泉は地熱発電所のものではなく、独自源泉。浴室は男女別に分かれているが、名物は混浴の露天風呂だ。緑に囲まれた開放的な岩風呂は、30人くらいは入れそうな大きさで、わずかに緑色をおびた乳白色の濁り湯がかけ流しにされている。あまりに見事な乳白色なので、見ているだけでもテンションが上がってくる。冬の雪見風呂も風情があるだろう。

 

■大地が呼吸しているかのよう

 泉質は、単純硫化水素泉。独特な温泉の香りがプーンと漂っており、匂いからも温泉情緒をかき立てられる。白い湯の花が舞う湯は、しっとりとした肌触り。見た目ほどパンチがきいた泉質ではないので、ゆっくり長湯を楽しむこともできる。


 女性の入浴は少し勇気が必要かもしれないが、一度、湯船に入ってしまえば、濁り湯で、身を隠すような大きな岩が配置されているので、そこまでまわりの目を気にしなくてもすみそうだ。私が訪れたときも、カップルや女性客のグループが楽しそうに入浴していた。それでも恥ずかしい人は、混浴露天の半分くらいのサイズになるが、女性専用露天風呂もあるのでご心配なく。


 峡雲荘の露天風呂からは、松川地熱発電所を望むことができる。冷却塔からは白い蒸気が大量に上がり、「ゴーッ」という低い音が響いている。まるで大地が呼吸をしているかのようだ。地球エネルギーのすさまじいパワーを体感できる。


 地熱発電がこれからの新エネルギー源としてスポットライトを浴びる一方で、地熱発電の開発が進むと、温泉が枯渇するという懸念もあり、開発に反対する温泉地も存在するのも事実である。松川温泉の場合は、温泉と発電所が共存しているが、温泉が枯れたら、温泉地にとっては死活問題である。


 誰もが無関心ではいられなくなったエネルギーや節電の問題。ゆっくりと考えをめぐらすには、峡雲荘の露天風呂はぴったりのロケーションだろう。

第82回 男鹿温泉郷(秋田県) 口から熱湯が噴き出す「なまはげの湯」前のページ

第84回 平山温泉(熊本県) スベスベヌルヌル「美肌の湯」次のページ

関連記事

  1. 第35回 指宿温泉(鹿児島県) サウナよりも気持ちいい!?「砂蒸し風呂」

  2. 第106回 国見温泉(岩手県) エメラルドグリーンに輝く宝石のような湯

  3. 第104回 伊豆山温泉(静岡県) 日本三大古泉! 知る人ぞ知る熱海の名湯

最新の経営コラム

  1. 第46話 本格的な変化の時代 将来に備えた基礎固めを(3)

  2. 188軒目 「中野屋 @長野県諏訪郡原村 ~原村にあるすばらしい『海味』の系譜」

  3. 朝礼・会議での「社長の3分間スピーチ」ネタ帳(2024年9月11日号)

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 人間学・古典

    第24講 「言志四録その24」人主の学は、知 仁 勇 の三字にあり。
  2. マネジメント

    第196回 『計算されたリスクを冒すことのできる人』
  3. マネジメント

    国のかたち、組織のかたち(12) 不平等条約改正(真の独立へ)
  4. 後継者

    第77回 幸せの要素 No.2
  5. マネジメント

    第257回 立てた目標を達成する「挑戦体質」にする方法
keyboard_arrow_up