人事評価制度の運用において、部下の納得感を高め、今後の育成に効果的につなげていくために、フィードバック面接が重要な役割を担っています。
評価対象期間(過去6か月間)の仕事の成績は、顕在化された能力と捉えることができます。フィードバック面接を通じて、具体的な評価結果に基づいて次の6か月間の努力すべき方向性を上司より示すことで、さらに部下本人の能力を高め、ひいては企業全体の生産性の向上につなげていくことが真の狙いです。
「どこが高く評価されているのか」「どこが評価されていないのか」ということは、部下にとっても関心の高いことですし、フィードバックを通じて、上司と部下との信頼関係が確認され、強化されるという効果も期待されるところです。効果的な面接を行なうためには、評価者である上司は、十分な面接時間を設けて、良かった点、改善すべき点、更に伸ばすべき点などのポイントを明確に伝えられるように十分に準備して臨んでいただきたいものです。
フィードバック(feedback)という用語は、制御システムの仕組みを示す言葉であったものが、一般的なビジネス用語として広まりました。元は電気システムやコンピュータ等で、出力(output)の一部を入力側(input)に戻すことを指して「フィードバック」と呼んでいたものが、成果等に対する周囲からの意見や反響なども含めるようになったと考えられます。人事評価に限定すれば、評価対象期間を通じて確認された仕事の成績(プロセスと成果=output)に基づいて、来期の生産活動(input)の改善を図ることと捉えることができます。フィードバックを通じて、期中における外部要因や環境変化による影響も、次の評価対象期間の目標や行動計画に落とし込まれることになります。
ところで、制御システムを示す用語には、フィードフォワード(feedforward)という概念もあります。この用語はあまりビジネスには用いられませんが、簡単に言えば「外部要因や環境変化による影響を、将来のある時点でのシステムや生産活動に適時適切に反映する」ということになるでしょう。通常業務の進捗管理を行なううえでもこのような考え方は有効ですが、目標管理制度の推進管理やコロナショックのような急激な環境変化が起こっているとき、更に社員の自律的・主体的な行動を促したいときには、このフィードフォワードという考え方は非常に効果的なものです。
例えば今期の売り上げ目標に対して、1カ月経過ごとに進捗状況を測定するとしましょう。現時点での売上高の達成率はもちろんですが、業務行動面でスケジュール通りの営業活動が行われているかどうかも確認し、仮に現時点での総合的な進捗状況が遅れているとすれば、明日からの営業活動全体の見直しを行い、具体的な行動に落とし込むという流れが、フィードフォワードの考え方に沿ったものとなります。
このとき、単に「達成率が低いから、もっと頑張れ」というのではなく、「平均単価が低いから、大口取引先への提案内容を見直そう。」「新規開拓のための種蒔きの対象件数を2倍に増やそう。」というように、「時々の進捗状況に応じて、行動レベルで何をどう変えるのか」を見直す習慣をつけることで、より目標達成に近付くことができます。
自社の生産性向上に向けて、部下に対する6カ月に1度の評価結果のフィードバックを実施することはとても大切ですが、これに加えて、進捗管理に基づいて短いサイクルで未来の行動を変化させるフィードフォワードという考え方も、今後はより重要性を増すことでしょう。