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<事例―24 ソムリエナイフのシャトー・ラギオール(B2CとB2Bの両需要)>ソムリエ用として考え出され、プロが愛用する逸品・・・それがソムリエナイフのシャトー・ラギオールだ

酒井光雄 成功事例に学ぶ繁栄企業のブランド戦略

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●プロと職人が共同して、誕生したソムリエナイフ
 
 フランス南部の山岳地帯に立地しナイフとチーズで知られる村がラギオールだ。1980年代にこの村の出身者がラギオールでナイフをつくろうと共同で工場を設立。しかし鍛冶のノウハウがないため、刃やハンドルなどのパーツを近隣のティエールから仕入れ、ラギオールの工場ではそれを組み立てていた。
 
 ラギオールにパーツを供給していたティエールで、1850年に創業し、洋食器と刃物のメーカーとしてSCIP(スキップ)社がある。ソムリエ世界チャンピオンのギ―・ヴィアリスが同社を訪れ、ワインを開けるプロ向けの機能と、ラギオールナイフの美しい形を兼ね備えた商品をつくりたいとの申し出があり、共同開発が始まった。
 
 数ヶ月後に完成したのがソムリエ用のナイフ(ワインのコルクを抜くナイフ)で、これに「Chateau LAGUIOLE(シャトー・ラギオール)」と名付け、1993年から同社で製造が開始された。
 
 3年に一度「ソムリエ世界一」に選出されるソムリエに、同社ナイフのデザインを依頼し、現在世界ソムリエコンクール入賞者モデルのソムリエナイフとしては、ジェラール・バッセモデル、アンドレアス・ラッソンモデル、エンリコ・ベルナルドモデル、オリビエ・プシェモデル、エリック・ボーマールモデル、マルクス・デル・モネゴモデル、TASAKIスペシャルモデル、セルジュ・デュブモデル、ジョゼッぺ・ヴァッカリーニモデル、ヘンドリック・トマモデルなどがラインナップされている。
 
 同社のソムリエナイフは製造工程の80%が職人によって仕上げられ、毎日何十本もワインを開けるソムリエの負担にならないように考えられた機能性により、トゥール・ジャルダンを始めとする著名レストランのソムリエや世界のプロフェッショナル、そしてワイン好きに愛用されている。ちなみに日本国内では20,000円~50,000円程の価格で販売されている。
 
 
●商標登録ができないため、この村の名をつけた製品が他にも存在する
 
 ラギオールはフランスの村の名前のために商標登録ができず、ラギオールの名前を使用したソムリエナイフはいくつも製造されている。
 
 日本でもライヨール・ナイフ、セパージュ・ラギュオール、オーブラック・ラギュオールという名で販売されている。(ちなみに「LAGUIOLE」の発音については、フランス南部では「ライヨール」、フランス北部では「ラギオール」と発音し、パリでは「ライヨール」と「ラギオール」の両方が混在している。)
 
 中でもフォルジュ・ドゥ・ライヨール社がライヨール村で製造するライヨール・ナイフはレストラン「タイユヴァン」のワインブティックで採用されており、シャトー・ラギオールと本家争いを行っている。
 
 
 
<シャトー・ラギオールの事例に学ぶこと>
 
 プロフェッショナルが企業の製品開発に参画し、そこから新しい製品が生れ、プロフェッショナルが愛用するようになると、B2BとB2Cの両分野で付加価値が高まる。最も厳しい使い手が認めた製品という評価が得られるためだ。
 
 この事例でもうひとつ見逃せないのは、ブランドは商標登録してこそ価値が守られるという点だ。類似したブランド名が他に存在すると、多様なリスクにさらされ、せっかく生み出したブランド資源が分散化することを記憶しておこう。
 
 
 
 
 
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