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採用・法律

第2回 『この叱責がパワハラにあたるの?!』

中小企業の新たな法律リスク

 イタリアファッションを扱う総合アパレル(国内に20店舗)の愛知社長が、裁判所から届いた封筒を手に、顧問弁護士である賛多弁護士の事務所へ駆け込んで来ました。さて、上司の叱責はパワハラに当たるとされてしまうのでしょうか。


愛知社長:賛多弁護士、大変だ!

賛多弁護士:どうされました?

愛知社長:半年前に我が社を辞めた社員が、元上司と元の職場である我が社に対して、パワハラ裁判を起こしてきたんだよ。

賛多弁護士:愛知社長が興奮されるのも無理はありませんね。訴状はお持ちですか。訴えの中身を確認しましょう。

愛知社長:これが訴状だよ。なにやら、上司が、その社員に対して、他の社員の面前で、「成績が悪い」「チームメンバーを育成していない」「この成績でチームリーダーが務まると思っているのか」「チームリーダーをいつ降りてもらっても構わない」等多数回にわたって厳しく叱責したので、ストレス性うつ病となったと書かれているよ。

賛多弁護士:そうですね。その上司は、その社員に対して、他の社員の前で、そのような叱責を繰り返したのですか?

愛知社長:その上司は、事実を認めているよ。

賛多弁護士:ストレス性うつ病になったのが、その上司の叱責のせいなのかを含め、弁護士によるより詳細な事実の調査が必要ですね。

愛知社長:事実の調査をしてもらうのは構わないが、「成績が悪い」のは事実だし、その他の叱責も、何ら問題ないと上司も私も思っているのだが、違うのかい?

賛多弁護士:この訴状に書かれていることが全て事実だとすると、上司と会社とは、法律上、責任を負う可能性が高いですね。似たような事例で、そのような裁判例があるのですよ。

愛知社長:ええー!しかも、損害額は9409万2488円と書かれているじゃないか。会社はそんなに多額の支払をしないといけないのか?

賛多弁護士:損害額は、訴状に記載のとおりに認められるとは限りませんので、そこは一旦措くとして、早速、調査に取りかかりましょう。

愛知社長:ぜひお願いするよ。はー、しかし、この程度の叱責で、会社まで責任を負うとは、恐ろしい時代だな。

賛多弁護士:パワハラには明確な法規制がなく、これまでは主に民法に基づき、裁判例が積み重ねられてきました。現在、国の審議会で、パワハラへの法規制が検討されています。どのような行為がパワハラに当たるのかも、指針などにより、より明確化される予定です。

愛知社長:こんな訴えが二度と起こらないように、賛多弁護士、ぜひ社員への教育を頼みます。

賛多弁護士:承知しました。社員一人一人の意識改革が重要ですから、お力になります。

 

 このように、その内容が事実であり何の問題もないように思える叱責であっても、他の社員の前で叱責を繰り返したり、社員の誇りを傷つけるような言葉を使って叱責したりした場合、それが不法行為を構成する(パワハラにあたり違法)と判断される可能性があります。
 厚生労働省は、本年11月19日の労働政策審議会の分科会で、パワハラ防止の取り組みを企業に義務づける法制化の方針を示しました。同省は2019年の国会へ関連法案の提出をめざしています。

 

(執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 木元有香)

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