経営が破たんしても、倒産する会社と、倒産しない会社がある。
どんなに資金繰りが悪化し、財務内容が劣化しても、属性を理解している販売先(顧客)をもっている企業は生き返ることがある。逆に、今はどんなに財務内容が良くても販売先(顧客)にかたよりがあったり、属性・需要を理解しづらい業種は、いざ、なにかがあって企業再生の段階になるとなかなかうまくいかないことになる可能性が高い。
抜群の財務内容をほこる上場企業の下請けの会社が、仕事も途切れることもなくコンスタントに利益を生み出していたが、あるとき、そこの会社にお呼びがかかって行き、決算書を拝見したら惨憺たる状態になっていた。
「どうしたのこの財務内容?」と聞くと、元請の上場企業からの仕事が海外の企業に流れ、販売先がその上場企業に特化していたため悲惨な状態になってしまったという。
その会社の経営者は、起業前はある銀行の審査を担当していた方で、僕なんかより十分、取引先の過度の集中はいけないとわかっていたはずなのにこの有様なのだ。
資金繰りが悪化し、財務内容がめちゃくちゃ悪くなった会社を何社も担当しているが、数年たっても生き残っている先は1社を除いて皆、多くの取引先(顧客)をもち、ちゃんとその属性・需要を把握し、それを生かしている会社だ。除外された1社ももう少し財務の視点で考え直せば十分に事業は蘇る可能性がある先だと思う。
販売先(顧客)について知ること、そしてその販売先(顧客)との会話の中から需要をみつけだし、利益を計算し商品化するというプロセスがないとなかなか生き残れない。
ところで、再生という現場でこの販売先(顧客)という資源を生かそうとすると、どうしても『時間』という制約がつきまとう。とくに、固定費の比率が大きい会社では『時間』をかければかけるほど財務体力がなくなり、倒産に近づくことになる。
では、どうしたらいいのか?とある経営者にたずねられたけれど、結局は経営者をはじめとして社員一同が販売先(顧客)と真剣にコミュニケートしていなければ、「どこにどんな需要があってこうすれば売れるものができるかもしれない」といった良いアイデアは思い浮かばないものなのだ。
やはり、すべては販売先(顧客)とのコミュニケートから始まっていると言えると思う。