企業再生が専門ですが、再生して軌道にのった会社の経理部門に深くかかわることがいくつもあります。
破たんする会社のほとんどは債務が原因で破たんするわけですが、その根っこには必ず財務・経理の理解と管理という問題があるからです。
まして、再生させた中小企業の場合、資金ショートをしても銀行借入ができず、再び破たんして従業員や債権者に迷惑をかけるわけにもいかないので、税負担と利益についてはとても気を使いながら財務管理を行うことになるわけです。
そこで、今回は棚卸し、いわゆる在庫と利益の関係について書いてみます。
売上高から売上原価を差し引いた利益を粗利益、粗利、売上総利益といいます。まだ経費等を差し引く前の段階の利益です。下記では期末在庫がいくら残ったかで粗利益を見ています。
期末在庫が500万円の場合では仕入れたものの内から500万円で1,000万円の売上を上げているので粗利益が500万円と高い利益となっています。原価率は50%です。
それに比べて期末在庫が100万円の場合では粗利益は100万円、原価率は90%となり、低い収益率となります。
「在庫が増えるとそれに連動して利益も増える」とよく言いますが、在庫が増えることは売上原価が下がることであり、その結果として利益が増えてしまうのだと理解できると思います。
利益が増えるのはいいことなのですが、それが法人税・地方税負担の増加につながるため再生企業では工夫が必要になります。
利益、税負担を増やさないためには、決算月には在庫を減らすことが一番よいことになりますが、在庫商品を売ることで消費税負担は増えてしまいます。
そこで、法人税・地方税と消費税の双方の負担を考えた税金対策が必要となります。このやりかたは企業によってまちまちですが、ネットで検索してもでてこないやりかたで、書籍でもみたことがないやりかたを一例として書いておきます。
これは製造業の会社の例なのですが、だいぶ以前におこなったものです。
決算月に締後売上(納品はしたが請求は未済)が月商程度に増加する可能性があると報告を受けて、その製品の製造ラインを休ませ翌月製造にまわし、月末締めで請求できる製品ラインの製造に集中したのです。
おわかりいただけると思いますが、これによって平均的な月商分の締後売上は計上されないためその分の消費税は0円となります。しかもこの判断は資金繰りも楽にします。
ただし、これによって仕掛品という在庫が増加するため法人税・地方税負担は増加しますが、完成品ではないためその分減価されその負担も軽減されるわけです。
経理・財務を考えて経営をしないとたいへんなことになる可能性もあるのです。