経営破たんした会社の決算書をみると何期にもわたって消費税を滞納している会社が多い。
消費税を負担するのは消費者で、預かった消費税相当額から、会社が支払った消費税相当額を引いて納税すればいいだけなのだから、支払えなくなるわけがないと思うのがふつうだが、じっさいにはそんな単純なものではない。
毎月多額の借入金返済をしている会社などは、資金繰りがショートしたときに意識すらせずにこのお金に手をだし最終的に消費税が払えなくなる。
とくに、税込経理をしている会社は月次の経理処理段階では税抜き経理に比べて利益が多くなり、「こんなに儲かっているのだから」と思いこんでしまい決算時に消費税分を使いこんでいて、支払えなくなることもある。
いや、まだその程度なら救いようがあるのだが、経理入力を税理士にお任せにしていたり、請求書は綴ってあるものの、領収書類はそのまま箱に入れられていて、何か月分かをためて整理するような会社や、もっとひどいのになると帳簿類の整理がめちゃくちゃな会社などもあるのだから、消費税が払えなくなることなどあたりまえの状況になってしまうのだ。
そんな会社でも、試算表を作らすと税込経理で見た目の利益がでていて、「ちゃんと返済されたことによって借入残もこれだけ圧縮されたのだから…」という理由で、実質消費税納税用の資金が別名目で融資されたりする。
免税事業者はもちろんだが、中小企業の場合、消費税の税込み経理で処理をしている会社もかなりある。税抜き経理をすると経理の事務量が増加してしまうし、仕訳も複雑になるからしかたないのだが。
破たんした会社の決算をよく見ていくと、消費税の申告方式があきらかに損なほうを選択している会社もある。消費税の申告方式には本則課税と簡易課税方式があるが、この方式の選択を誤ると思いのほか多く課税されることもある。簡易課税方式はその会社がいくら消費税を支払ったかに関係なく、売上から一定のみなし仕入率をかけてその分を控除して納税額を求めるのだが、本則課税を選んだ方が得なのに簡易課税を選択している会社もみうけられるのだ。
営業利益の段階で赤字になり破たんする会社の社長は、そもそも商売に向かない経営者であり、消費税のような税金の滞納で資産が差し押さえられ破たんする会社の社長は商売はできても経営ができない社長なのだ。
さすがに最近の破たん事例では商売ができない営業利益すら計上できない会社は減ったが、財務や税金を勉強していない、あるいはちゃんとやっていないために破たんに向かう会社は多くなった。
いくら経理担当や顧問税理士がちゃんと経理業務をやっていても、本当の戦略的な部分で社長と考え方が同じではないため、経理や顧問税理士からの提案が戦略と一致しないことがあり、社長が経理業務に直接関わらないことでその戦略が実現できないことがでてくる。
まして税理士はその資格剥奪をおそれるために過度に税務行政のいいなりになりやすく安全な道を選びやすい。彼らの言う税金対策は世に知れ渡っている節税対策にとどまり、キャッシュが残らないことになる。
社長みずからが税務や財務をしっかりと勉強し、自社の財務のどこをどう動かすとキャッシュが残るようになるのか、そのためにはどんな障壁があって、それを乗り越える方法にはどんなものがあって、それが許される法的根拠はどこにあるのかを理解していなければキャッシュは残らない時代なのだ。