本来ならば、読書の秋、真っ盛りの時期にもかかわらず、急に冷え込んできて、既に冬のような気温。
そこで、心の底から熱くなるような人間ドラマをご紹介したいと思います。
『パリのハイブランドが欲しがる技術は、なぜ東京の下町で生まれたのか』(著:長谷川博司)
パリのハイブランドが欲しがる技術は、 なぜ東京の下町で生まれたのか ~蔵前の頑固オヤジの反骨仕事術~/amazonへ
です。
著者は、株式会社革包司博庵(ひろあん)の創業者で、革職人の長谷川博司氏。
三代続く紳士物小物専門メーカーの継承者で、この道50年以上の匠です。
当コラム読者の皆さんの中にも、博庵ファンの方、あるいは、
そうとは知らずに博庵の財布を愛用している方もいるのではないでしょうか。
その美しい財布と、それを生み出す高い技術は、ヨーロッパからも注目を集め、
革の本場として知られるイタリアのブランドからは、
「自社工場で技術指導してほしい」という依頼もあったほど。
このコロナ禍においても、”日本のエルメス”を目標に、
さらなる挑戦を続けています。
そんな長谷川氏の熱き想いを象徴する言葉が、
「おわりに」にありますので、以下、一部引用します。
「僕がブランドを作ろうと思ったその原動力には、男としての野望もあった。
僕の野望は、権力にも、財力にも向かず、ひたすら財布に向けられた。
最高品質の財布を作って、僕の技を日本に、世界にひけらかしてやると思った。
なんて平和な野望だろうか。
権力や財力だとそうはいかないが、財布づくりにいくら野望をぶつけたところで、
誰かが幸せを感じてくれるだけ。
これからも安心してそこに男の野望をぶつけていこうと思っている」
こんな”野望”を持つ現役職人であり、経営者である長谷川氏が、
一体どのように仕事に取組み、マネジメントをしているのか?
ユニークかつ、創造性にあふれるものばかりで、
経営者やリーダー必見の内容!
たとえば、
・率先垂範
・人間にあって、ロボットにないもの
・用いるに際して美しいもの
・道具の創造
・名刺入り名刺入れ
・儲けた金の使い道
・職人目線のSDGs
・仕事を作る・広げる
・リクルート・人材育成
など、読みどころを挙げればキリがありません。
さらに、革財布愛好家には、たまらないマニアな話も
多く収録。男のロマンがあります。
仕事の参考になる上に、好奇心を?き立てられ、
元気注入も!
一石二鳥にも三鳥にもなるこの一冊、
ぜひとも読んでみてください。
今の日本に足りない、大切なものが、ここにあります。
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は
『古典派トランペット協奏曲集』(演奏:ガボール・タルケヴィ)
「古典派トランペット協奏曲集」 (Trumpet Concertos)/amazonへ
です。
元ベルリンフィル首席トランペット奏者、ガボール・タルケヴィ氏の傑作。
超絶技巧でありながらも格調高い演奏ぶりは、まさに職人芸の極みで、
長谷川氏と通じるものを感じます。
本書と合せてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。