3月上旬、中国のマスコミに「黄金の村」と呼ばれる中国江蘇省江陰市長江村を訪れた。
なぜ「黄金の村」と呼ばれるか?実は39年前、長江村には村工場が発足し、来年はちょうど節目の40周年に当たる。40周年記念事業の一環として、長江 村は全818世代・2800余人に対し、特別賞与として1人当たりに純金100グラム、銀100グラムずつを支給することを約束した。昨年11月末、村民 への約束を一部繰り上げ履行するために、まず1世帯当たりに金100グラム、銀100グラムずつを支給したのである。当時の市場価格では50万円に相当す る。この前例がない行動によって、長江村は中国のマスコミに注目され、「黄金の村」と呼ばれるようになっている。
純金支給よりさらに世の中を驚かせたことがある。2006年、長江村の818世帯は村からそれぞれ一戸建て別荘1棟、現金10万元が支給された。
なぜ長江村はこんなに豊かになったのか?なぜ村の住民たちに現金ではなく金と銀が支給されたのか?好奇心に駆使された筆者は、現地調査を実施することを決めた。
上海から高速鉄道(最高時速320キロ)に乗って40分で無錫に到着。車で高速道路を走り30分後江陰市長江村に着いた。長江村と言えば、長江沿いの村 というイメージだが、実際、現地に行ってみれば農村の面影がなく、むしろ工場が並ぶ工業団地と言ったほうが実態に近い。
長江村の責任者、新長江実業集団有限公司財務総監(CFO) 範建国氏の説明によれば、39年前の1972年12月、当時の長江村経理担当(現新長江実業集団有限公司董事長、長江村書記)の李良宝氏氏は、村民から集 まった700元の資金をもって村工場「長江五金工場」を創設した。これは現在の新長江実業集団有限公司の前身である。今は村と企業が一体化している。
1990年代以降、長江村は飛躍的な発展を遂げ、相次いで港開発、船舶解体、繊維、鉄鋼・金属製品、化工、不動産など分野に進出した。現在、長江村は世 界最大規模の船舶解体工場も持っている。2010年の売上は485億元(6060億円相当)、純利益11億元(137億円相当)にのぼり、村人口2800 人で平均すれば、1人当たり売上2億円、純利益489万円の計算です。さらに2015年は売上1000億元を目標としているという。
また、長江村は中国富裕村ランキングでは3位、新長江実業集団有限公司は中国企業500社ランキングでは223位とそれぞれランクされている。
長江村は中国の町おこしの成功例であり、その経験は中国の農村のみならず、日本の市町村にとっても良い参考になると思う。
中国の高度成長に伴って豊かさを実現した長江村は、村民たちに金と銀を支給することも意味深い。周知の通り、今の中国のインフレ率は5%前後、1年期の 預金金利は約3%。つまり実質金利はマイナス2%となっている。一方、金の価格はどんどん上昇しており、現金より金の価値が高い。金と銀を支給すること は、インフレ高揚に悩む国民にとっては、大いに歓迎される行動である。
長江村の純金支給行動から、われわれは「高成長、高消費、高インフレ」という今年中国経済の3つの特徴を読み取れるのではないかと思う。