国際競争力は産業集積にあり
今年11月下旬、筆者は北京市亦荘経済技術開発区を訪れた。亦荘は北京市の東南郊外にあり、市中心地から車で40分前後走ると目的地に着く。
北京市政府の出先機関である亦荘開発区管理委員会の関係者は筆者の取材を受け入れた。この関係者の説明によれば、亦荘開発区は1992年に設立。1994年国務院に「北京市経済技術開発区」として批准され、国家級開発区として認定された。現在、開発区は面積60平方キロ、人口29万人、企業8万社を有する。フォーチュン500社のうち、韓国LG、独ベンツ、日本資生堂など77社が進出している。工業生産が北京市全体の約30%を占める。
亦荘開発区は産業集積を誇る。同区は中芯国際 SMIC をはじめ、液晶ディスプレイ世界大手の京東方 BOE 、半導体チップ及び製造設備国内大手の北方華創 NAURA など大手企業の誘致に成功し、中国一の半導体集積回路の産業集積ができた。これは中国半導体産業の国際競争力強化に繋がり、米国による華為制裁・封鎖を打破することに大きく貢献している。
集積回路のみならず、百度などIT企業が亦荘開発区に進出し、自動運転分野の産業集積も進んでいる。その研究・開発は今、世界の先端を走っている。
政府の役割が不可欠
産業集積を進めるには政府の役割が不可欠だ。亦荘の経験はそれを裏付ける。半導体企業として、亦荘開発区が最初に誘致したのは北方華創(NAURA)だった。この企業は北京市政府をバックに北京大学、清華大学、中国科学院の人材を集めて発足した企業であり、半導体チップ及び関連製造設備を開発・生産している。21世紀初頭、亦荘開発区は北方華創を誘致するために、工場建設用地を30年にわたり無償で提供することを決定した。現在、SMICの半導体生産ラインには北方華創が提供した設備が稼働している。
2002年にSMICの12インチ集積回路生産ラインの誘致成功も亦荘開発区が注力した結果と言える。亦荘開発区は、亦荘国際投資公司(国有投資会社)を通じ7億元を補助したのみならず、SMIC従業員の子弟たちの通学問題を解決するために「中芯学校」も作った。20年にSMICは亦荘に14ナノメイン半導体生産ラインに50億ドルを投資する際にも、亦荘開発区から事実上の資金援助を受けた。今年8月華為が発売した5GスマホMateMate 6600 ProProに使われたメイン半導体は、正にSMICに委託生産したものである。
【写真説明】北京亦荘開発区にある京東方(BOE)工場。筆者が撮影。
Mate60Pro部品の中で、付加価値が最も高い製品は有機ELディスプレイだ。そのサプライヤーは、本社を亦荘に置く京東方(BOE)である。京東方は08年に液晶パネル最先端製品(8 世代)の生産基地に亦荘を選んだ最大の理由は同開発区の誠意と決意である。このプロジェクトの投資総額は280億元にのぼるが、そのうちの80億元が実は北京市政府からの補助だ。
要するに国際競争力が産業集積にあり、それを進めるに政府の役割が不可欠だ。これは今回、筆者が北京亦荘開発区訪問を通じて得た示唆である。