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第三十九話 お客さんに喜んでもらいなさい(田や)

社長の口ぐせ経営哲学

競争が厳しく飽和状態の外食産業。10年ぶりで復調傾向が見え始めている。
そういう状況の中で、創業して42年間、和食料理店で着実に業績を伸ばしているのが
「味の田や」を経営する(株)田や(本社・渋谷区)。
池袋・東武百貨店14階の「味の田や」池袋店、渋谷店(東急プラザ9F)、 船橋店(東武船橋店7F)の3店舗を開業している。


「美味しい新鮮な旬の魚料理を食べさせてくれる和食料理店」というのが、「味の田や」の特徴である。
常連客も多く、「今日は何がある」「今日のお勧め一品 は何」といった常連客の注文が当たり前の店である。
コース料理と単品料理がバランスよく、注文される落ち着いた店。
独自の仕入れで、いい状態で食べていただくというのが全店挙げてのモットーである。


「本日の焼き魚」「おすすめの一品」がメニュー書きされているが、
和服姿の接客係のスタッフが口頭で「おすすめの一品」を勧めてくれる。
同社の宮本旻社長は「美味しい魚料理を食べさせる店」を提供するために、徹底したプロ意識のある人材教育を行っている。
「お客さんに喜んでもらいなさ い」が口ぐせである。
「美味しかった」「気分がいい」「また来ます」といったお客さんからの言葉が出るくらい、気遣い、心遣いを徹底している。


宮本社長は「基本であるマニュアルは4割、残り6割は自分流、自分らしさを出しなさい」という。
そのためには「お客さんを好きになりなさい」と気持ちが第一という。
お客さんに少しでも、いい思いをしていただくという気持ちが最初にあれば、本当の接客ができるからだ。
毎日の仕事場、現場でしかも自分で工夫することが、おもてなしの真髄という考え方を持っている。


顧客に接するスタッフ自身が、本気で顧客に気をつけていかなければ身につかない、という。
一人ひとりが“本当のもてなし”ができる人材育成に力を入れている。
店長、スタッフの全員に「現場で考えないさい、工夫しなさい」の檄を飛ばす。
仕事での問題には、真正面から取り組み、悩み、その後にしか、いい答えは 出てこない、
という“現場の知恵”を最も重要視している。


宮本社長はいつも、現場から、どうしたらお客さんに喜んでもらえるのか、が頭にある。
自ら実践してきただけに、「喜んでもらいなさい」の簡単な言葉だが、 深く意味のある言葉になっている。
「わがままなお客さんほどありがたい。接し方次第で常連さんになっていただいた経験は多数あります。
この店で満足してい ただく、という姿勢ですね」という宮本社長。
筋金入りのもてなし術でスタッフを教育している同社の接客術は注目に値する。

 

                                                             上妻英夫

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