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第61話 「中国ビジネスフォーラム北京視察団」訪中レポート

中国経済の最新動向

 去る9月7~11日、島田精一・日本ユニシス特別顧問を団長、私を副団長とする中国ビジネスフォーラム(代表:沈才彬)北京視察団一行14人が北京を訪れた。当フォーラムが2011年5月発足以来、中国に視察団を派遣するのは今回が初めてである。
 
 中国滞在中、日本大使館、国務院発展研究センター、清華大学、中国企業連合会、四通集団公司、三井物産(中国)などを訪問し、木寺在中国特命全権大使、魏加寧副部長、胡鞍鋼教授、于武副理事長、段永基会長、澤田総代表とそれぞれ懇談した。中国の産・官・学を代表する機関との交流を通じて、日中相互理解を深め、実り豊かな視察成果を上げたといえよう。
 
◆「Factory China」から「Market China」へ~三井物産(中国)澤田総代表~
 9月9日午前、視察団一行は三井物産(中国)を訪れ、澤田・執行役員総代表と懇談した。澤田氏は三井物産(中国)の業務を簡略に紹介した上に、同社の中国ビジネスに関する2つの戦略方針を説明した。
 
 1つは「Factory China」から「Market China」へという中国ビジネス戦略の重点転換である。これまで三井物産はほかの日本企業と同じように、「世界の工場」として中国を活用してきた。しかし、今の中国は世界の工場としての生産国を脱却し、豊かな生活の実現への欲求が非常に強い、品質・安全重視の消費者国に成長している。三井物産(中国)もこの時代の変化に応じ、「世界の市場」としての中国を重視する戦略を明確に打ち出した。
 
 2つ目は沿海地域と内陸地域のバランスを重視する方針である。これまで三井物産の中国駐在事務所は沿海地域に集中する傾向があり、この地域は中国の成長センターであるからだ。ところが、近年、沿海地域の成長率が鈍化し、内陸地域の成長率は沿海地域を上回る傾向が続く。総合商社としては、内陸地域も巨大市場となりつつある事実を無視できず、内陸市場も重視する新たな方針を示す必要がある。新方針の一環として、三井物産は最近、湖南省の省都・長沙市に新たに駐在事務所を開設したのである。
 
◆「地方債もシャドーバンキングも改革しか解決の道がない」~魏加寧国務院発展研究センター副部長
 9日午後、国務院発展研究センターを訪問し、同センターの魏副部長に「中国金融改革の現状と課題」を題とする講演を行って頂いた。
 
 同センターは国務院(内閣に相当)直轄のシンクタンク、一流を誇る政府のプレーンたちが集まる政策研究機関である。同センターは中国経済の発展戦略、政策方針について、直接、国のリーダーたちに提言し、その研究成果の多くは政府の政策に反映されている。センターのトップは閣僚級。講師の魏加寧副部長は金融専門家で、東京大学に留学する経験もあった方である。
 
 魏氏は講演の中で、地方債とシャドーバンキング問題に触れ、改革の必要性を次のように強調した。
 
 「地方債の規模はまだコントロール可能な範囲にあり、すぐ債務危機が発生するとは思わない。問題は主に2つ。1つは規模拡大のスピードが速すぎること。もう1つは個別地方政府の債務超過リスクのこと。地方債問題の解決は改革しか道がない」。
 
 「シャドーバンキング問題も同じだ。改革をしなければ、早かれ遅かれシャドーバンキングは大問題となる。この意味で、改革は中国の未来を決める」。
 
◆日本企業の誠実さを絶賛する段永基・四通集団公司会長
 10日午前、一行は四通集団公司を訪れ、段永基会長と懇談した。四通集団公司は1984年に設立したIT企業で、最も歴史が古い民間企業の1つである。同社は中国のいくつかの「ナンバーワン」を作った。四通電子が本土民間企業の香港株式市場上場第一号であり、子会社の「新浪ネット」が中国企業の米ナスダック上場第一号である。
 
 同社は日本企業との付き合いが長く、三井物産、三菱電機、富士通、松下電工など日本企業と数多くの合弁企業を作った。特に、三井物産との間に、かつて6つの合弁会社を持ち、しかもすべて黒字だった。
 
 視察団一行と懇談した段永基会長は同社創業者の1人で、中国経済界に大きな影響力を持つ大物経営者。経団連に相当する中国の企業連合会の副会長も兼務している。
 
 段会長は日本企業につき好印象を持っており、その誠実さを絶賛している。面談中、段会長は富士通と合弁企業を設立するきっかけとなったエピソードを紹介した。富士通の合弁パートナーとして、中国では8社が手を挙げ、うち7社が国有企業で、四通だけが民間企業だった。会社規模も財力も四通は国有企業の比べ物にならないほど不利な立場にあったが、ふたを開けてみると、富士通は四通を選んだ。その理由は、なんと四通だけが最上階の窓まで埃がなかったからだという。お客様の立場で細部まで掃除する気配りが、誠実さを重視する富士通を動かし、結局、誠実な会社が誠実なパートナーを選んだ。
 
◆「向こう20年中国の潜在的成長率は7.5%」~胡鞍鋼・清華大学教授~
 10日夕方、一行が清華大学を訪れ、著名な経済学者、中国政府の経済政策プレーン胡鞍鋼教授に講演して頂いた。
 
 清華大学は習近平国家主席、胡錦濤前国家主席、朱鎔基元首相の母校であり、絶大の政治的影響力を持つ、中国の大学を代表する名門校だ。その前身は、1911年アメリカ政府は義和団の乱で清王朝がアメリカに支払った戦争賠償金の一部を中国に返還し、設立した米国留学予備校・清華学堂である。伝統的にはアメリカの影響が強い。
 
 講師の胡鞍鋼教授・同大国情研究院長は朱鎔基、温家宝、李克強ら3人の首相の政策プレーンを務め、今中国政府が実施している「分税制」(国税と地方税を分離させる制度)がまさに胡教授の提案を参考に1994年より施行し始めた税制制度である。
 
 講演に先立ち、胡教授は清華大学の概要をご紹介。その中、2つの数字が印象的だった。1つは、中国は全国統一試験の受験者数は900万人、清華大学の新入生定員は3500人。言い換えれば、900万人から3500人のエリートを選び、他校を圧倒する高い学生の質を誇る。2つ目は在学生のうち、外国人留学生の人数が中国人学生を上回っている。訪問当日、丁度、清華大学公共管理学院主催の留学生懇親パーティーが賑やかに開催され、日本を含む数十カ国の留学生が集まった。
 
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清華大学公共管理学院教育棟前で胡鞍鋼教授(前列中央)と記念撮影

 講演の中で、中国経済の見通しにつき、胡教授は「向こう20年間、中国経済の潜在的成長率は7.5%で、うち2011~20年は8%、2021~30年は7%にのぼる」という楽観的な見方を示した一方、エネルギー供給、資源消費、環境問題、二酸化炭素排出など制約的要素を考慮すれば、「中国政府は経済成長のスピードを追及するのではなく、雇用と国民生活にかかわる成長の質を重視すべきではないだろうか」と強調した。
 
 このほか、視察団一行は日本大使館も訪れ、木寺昌人特命全権大使を表敬訪問した。
 
 また、日本の経団連に相当する中国企業連合会を訪れ、于武副理事長とも懇談した。中国企業連合会は1979に発足し、現在、会員企業56万社、全国的企業団体36団体が加盟する中国最大の経済団体である。于武副理事長は懇談中、日中経済交流の重要性を強調し、今後「医療保険、健康産業、汚染処理、環境保全などの分野で日本企業との交流や協力を強化していく」と、意欲を示した。

 

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