引退するしないに係わらず、従来の「100%会社人生」から一歩踏み出すとき、
注意しないと思わぬ人間関係の落とし穴に入り込んでしまう。
先日お会いしたNPOセンターの長の方が、「会社のお偉いさん、一流企業に勤めていた方ほど
ボランティアの世界では評判が悪いんですよね。せめて車の運転でも上手ならね」と吐息をついていた。
ボランティア活動においては原則皆平等。
幾ら目上だから、会社の社長だったからといって威張られたのでは傍迷惑なのである。
ボランティアの世界では入りた てホヤホヤの社長より学生の方が経験豊富な場合だって多い。
それを「おい君コピーをとりたまえ」「返事が悪い!」など言われたのでは、折角のチームワークが台無しになる。
「偉い人はハンコを押すくらいしかやってこなかったんですかね、何してもダメなんですよ」、
でせめて「手品とか何か一つ特技あればね・・」ということになるのである。
社長の身分はすっぱりと脱いでしまわなければ本人もイライラするに違いない。
一流会社出身のオレが三流会社の人と一緒か・・という発想そのものがボラン ティアの世界ではナンセンス。
「途上国の女性の生活支援」とか「高齢者の生きがい作り」などの共通目的を追求する仲間同士がともに戦うのである。
非常に難しいが、地位からくるプライド、年上だというプライドを自ら治めることができて
始めて敬意をもって接してもらえることになるのではないだろうか。
幼少時より慈善活動やボランティアが習慣化している欧米の経営者はこのあたりが手馴れている。
時にフィランソロピーやボランティアはリーダーシップトレーニングなど二世教育の一環と位置づけられる。
更に親子で同じボランティア活動に従事すれば「コミュニケーション」は格段によくなるというので、
ファミリー 企業にとっては社会貢献が貴重な「資源」ともなっているのである。
榊原節子