勝ち組と負け組が明確になる今、経営者の判断がブレると会社は、これから負け組に入ってしまうでしょう。しかし、経営者の判断が理念を軸に、ブレなければ、会社は、生き残り、勝ち残ることが可能です。
なぜなら、先行きの見えない日本で現場は、経営の判断が常にブレない会社なら、その会社を信頼して“ついていこう”と思い、顧客の声に耳を傾け始めるからです。
会社は、永続する必要があり、永続させるには儲からなければならず、そのためには、顧客の声を聴き、必要とされる会社になり、利益を生み出すことが不可欠です。
経営者は代わりますが、変わらぬ経営理念を軸にブレない経営を実践し、会社の風土を築けば、現場が一つとなり、顧客になくてはならない会社には何が必要か?探り当てることができるのです。
そこで27回連載を終わり、今回からは全3回で“ポジショニング”をキーワードに“どの顧客”を対象にアプローチすれば新しい顧客を創造できるか?を、売れる仕組みを経営理念とリンクさせ、現場士気を向上することで売り上げをアップさせている会社を事例と共に解説いたします。
~企業理念は「すべきこと」で実現可能になる!~
1907年化学者であるウージェンヌ・シュエレールが画期的な安全性の高いヘアダイ(毛染め)の開発に成功。
フランス・パリでは、頭髪のカラーリングはすでにファッションの一つでしたが、当時のヘアダイには問題点(強い薬品を使用し、仕上がりも不安定)が多く、これらを解決するこの商品はヒットを博します。
それから2年後(1909年)同研究所はロレアルという名で創業。
今や企業名を冠したシャンプーやヘアカラーが世界中のどのスーパーマーケットにも置いてあるほどのメジャー商品となっています。
が、この企業をここまで牽引できたのは
同社の企業理念
「美と人生の豊かさのために」 の存在が、
同社のミッション(使命)となり、その実現のために「すべきこと」が以下のよう具体的に明確化されていたからなのです。
<「美と人生の豊かさのために」現場がすべきこと>
自分を磨くことの歓び、自分らしさを表現したいという願い、あるいは、自己を確立し、社会的に認められること、それにより、いつまでも若さを保つこと……。
~独自のポジショニングで現場ベクトルをそろえる!!仕組みとは?~
ロレアルは現在130カ国で展開し、年間売り上げは2兆円を売り上げる世界最大の化粧品メーカーです。
同社は先述のヘアカラー分野からその事業を始め50以上のブランドを市販、ヘアカラーのほかにパーマ、スタイリング、ボディケア、スキンケア、洗顔、香水など美容のあらゆる分野において、ヘアサロン、香水売り場から、スーパーマーケット、ドラッグストア、薬局、通信販売と様々で販売され、美容のあらゆる分野の商品を多様な流通経路を通して販売するという独自のポジショニングは、今なお同業他社の追随を許していません。
様々な商品を様々な流通経路で販売、利益を生み出し、且つ現場ベクトルをそろえているためにロレアルは何を仕組みとして取り入れているか?
その仕組みとは、
社内に大小の規模の違う部門を商品プロジェクトごとに組織化、先述の“すべきこと”を実践する理由を、「企業理念実現のために」(下記)と明確にし、それぞれの部門(船)が、同じ方向(現場ベクトルがそろう)へ向かい、(各プロジェクトで)現場が自主的に責任を担うことなのです。
“すべきこと”を実践する理由<企業理念実現のために>
ロレアルが存在する目的(企業理念)は、「美と人生の豊かさのために」である。
~評価基準をルールにすれば現場は納得してついて来る~
ロレアルには年功序列は無く、20代でも小さなボートの船長として経験を積んで決断する力を磨き上げ、やがては大きな貨物船の舵取りができるように、自身の成長を促していくための下記ルールを評価基準とすることで、若い世代が組織内で躊躇無く意見を言える雰囲気を醸成しています。
<ロレアルのルール> “1回目の失敗は許す”
同社はこのルールを全社員に認知浸透させ、失敗から学ぶ機会を与え、社員になぜ失敗したか?を繰り返し問わせ、失敗の記憶を深く刻み込ませることで、同じ失敗を二度としないように社員に気づかせ、同時にこれまでわからなかった解を見出だすよう社員を導くと同時に意思決定力(リスクをとって独自の決断ができる力)育成の3か条を以下のように定め、次の船長を育成。
・ 全社員に「失敗する権利」を与える
・ なるべく若いうちに意思決定の機会を与える
・ 1回目の失敗は許し、挑戦したこと自体を評価する
現場は上司の評価に納得(評価がルールに準じ企業理念に沿っていれば)すれば、(企業理念実現を目的とした)同じ船に乗り、船長の示す方向へ漕ぐことに全力を注いでくれます。
企業理念「美と人生の豊かさのために」実現に向けて、ロレアルは、企業文化として
全社員で1つの評価基準“1回目の失敗は許す”を共有することで
~リスクをとって独自に判断する~機会を全社員に与え、
世代に関係なく、全社員が失敗を恐れず何事にも挑み、全社員が船長になれる可能性を醸成し、自主性で輝く“人を育て”且つそれぞれの部門で利益を生み出せることを常に考えているのです。