若い頃は自分が病気になる等とても信じられず、体力まかせの無鉄砲な生活をおくってしまう。職業上の知識習得には熱心でも、最も大切な「自分の命」、つまり健康のこととなるとついつい二の次にしてしまいがちである。
病気になるまで自分の身体のことなど一顧だにしない人が実に多い。知識がなければ不調や病の発見が遅れ、その分治療にも時間がかかり、経営どころではなくなってしまうかもしれない。
高血圧、糖尿病などは若い頃の生活習慣が大きく関係していることが判明している。
経営者は業績に対するのと同様、「自分の体は自分で守るぞ!」という気迫を持って臨んで欲しい。健康情報を得るだけではダメで、体によい習慣を身につけることが肝要だ。健康を失ってからでは遅いのである。病によってはマヒが残ったり、無理のきかない体になってしまう。命を落とす場合だってある。
健康に関するよい習慣は子供のときにつけてしまうに限る。まず正しい姿勢。イギリスの上流社会では母親やナニー(乳母)が徹底的に正しい姿勢をたたき込む。ときには椅子の背もたれをつかってかかとをあげる練習を延々とさせる。姿勢をただしくし、正しい歩き方をするのに必要な筋肉をつけるためである。
当然、食事どきの姿勢も厳しく指導される。イギリスでは姿勢が悪いと「お育ちが・・・」という話しになると聞いた。
姿勢が悪いと、見映えが良くないだけでなく、全身の血行が滞り、肩コリや腰痛、膝痛に悩むことになり、臓器の機能にも支障を来す。
食事しかり。バランスのよい食べ物ー穀類、肉、魚、乳製品、卵、野菜、イモ、海藻、大豆製品、キノコ類を好き嫌いなく定時にとる習慣をつける。これだけでも一生の健康の支えになってくれるはずだ。経営論を学ぶことも重要だが、肥満の弊害、農薬や添加物の体への影響、ミネラルやビタミンに関する知識も必要だ。日本食は健康的と言われるが、問題はみそ汁や漬物、醤油による塩分の取りすぎ。WHOの推奨する6グラムに対して倍ちかくを摂取、これが高血圧、血管の老化へとつながるのである。(塩は天然のものがお勧め!)
よく噛む習慣も大切だ。107歳にして7ヶ国語を話すので有名な(しかも90歳から習得したという)しいのみ学園創立者、曻地 三郎氏に「長生きの秘訣」を聞いたところ、「ひと口30回噛むこと」という答えが返ってきた。グリコの創業者にいたっては「100回噛む」を家族に言い続けたそうだ。
日本のサラリーマンの昼食は平均19.6分、これを改善するだけでも胃への負担が軽減され、過食を防ぐ効果抜群。脳に「満腹の信号」が届くには時間がかかるからである。
飲酒のマナーも訓えよう。「酔っ払っていたので何をしたか覚えていない」は許されない。特に欧米人の目は厳しい。酒と同量の水を飲む、胃の粘膜を守るよう食べ物を入れるなどを教えよう。そして休肝日を設けること。多くの経営者が酒に命を奪われている。
運動の習慣はついているだろうか。経営者には気力とともに体力が必須。スポーツで体を鍛えておく、きちんとした運動習慣をつけておくことは体に、心に、気力にとって欠かせない。
50歳代、60歳代ずっと健康でいたのはどんな人かという調査がなされたが、結果はしごく常識的な線で、「運動や食事に気を配る人」であった。上記に挙げたことはほとんどの人が知っていることである。しかし、知っているだけではダメで、それを実行しなければ健康にはなれない。自己コントロールが問われているのである。
榊原節子