日蓮聖人が入滅(臨終)された場所である東京大田区の池上本門寺に、「NEO SHOJIN STYLE(ネオ精進スタイル)」と銘打った、お庭とお料理を楽しめるレストランが4月26日にオープンして話題となっている。
このレストランの魅力は何と言ってもお庭で、桂離宮の建築と造園で名高い小堀遠州により作庭された、見事な枝垂れ桜のある庭園「松濤園」を窓の外に楽しみながらお食事ができることだ。
東京都旧跡に指定されている「松濤園」は、約13,000m2もある池回遊式庭園で、慶応4(1868年)年3月に、新政府軍の参謀西郷隆盛と徳川軍の勝海舟が江戸城開城の交渉を行った場所としても有名だ。
また、お料理は精進料理の代表食材である豆腐、湯葉、生麩、野菜を中心にした「ネオ精進スタイル」と呼ぶ現代風の新しい精進料理が楽しめるが、日蓮聖人が当地に到着された時に昼食として振る舞ったとされる「引き摺(ひきず)り豆腐」が名物だ。
日蓮聖人は、弘安5(1282)年に9年間住みなれた身延山から病気療養のため常陸の湯に向かわれる途中に、現在の本門寺がある武蔵国池上の郷主・池上宗仲公の館に立ち寄られ、体調の優れなかった日蓮聖人が少しでも元気になるようにと、鎌倉時代には高級な食材とされていた豆腐や胡麻を使った料理をお出ししたのが「引き摺り豆腐」とされている。
これは、世界遺産に登録されているフランスの巡礼地「モン・サン・ミッシェル」の入り口にある店(la Mere Poulard)で、疲れ果てて辿り着いた巡礼者に元気をつけるために出したとされるオムレツが名物料理となったことと似ている。
「松濤園 櫻」では、この「引き摺り豆腐」を店の特別な一品「寺馳走」(寺のごちそう)としてセットメニューや単品として出しているので、ぜひ食べてみていただきたいと思っている。
■景色(観光)と名物料理
日本国内では、お金と時間を持つ中高年層がいろいろな所に出かけているし、海外からの観光客も年間1,000万人を越えて、2020年の東京オリンピックに向けて2,000万人まで増えて行きそうだが、美味しい食べ物やきれいな景色があれば、黙っていてもお客が来てくれるとは限らない。
池上本門寺の場合も、毎年10月11~13日の3日間行なわれる日蓮聖人の遺徳を偲ぶ「お会式」の時は30万人もの人で賑わうが、通常の時期は景色(松濤園)と名物料理(引き摺り豆腐)が揃って始めてわざわざ人が来てくれる。
日本には全国に美味しい食べ物や美しい景色があるので、これを組み合わせて集客につなげていっていただきたい。