島根県と広島県の県境にある「邑南町」という山間の町が、「A級グルメ」のまちづくりで全国からも注目されている。
ここは、今でも人口1万2,000人に対して、20~39歳の女性が800人とわずか6.6%(全国は1億2,800万人中1,580万人で12%)だが、2040年には、人口6,800人中340人と5%足らずとなってしまう人口推計レポートがあり、これに危機感を持った町の観光協会が「若者や女性にとって魅力のある地方とは何か?」を考えた。
そして、「住民が自分たちの地域に誇りを持っていることだ」という結論に達し、地域固有の資源を最大限に活かし、若い人の活躍の場を用意するという取り組みを始めた。
邑南町での「地域固有の資源」といえば、米を始め野菜や果物、ハーブなどの栽培という農産物なので、それを活かして、一村一品運動やB級グルメなどにも取り組んできたが上手く行かず、辿り着いたのが「A級グルメ」だという。
「A級グルメ」は、特産の石見牛やハーブ、野菜など地元のいい食材を、一流シェフが調理する地産地消のレストランを作ることでこの町を訪れる人を増やすという構想だ。
大阪ホテルプラザ、ザ・リッツ・カールトンなどを経て、ANAクラウンプラザホテル広島のシェフをしていた邑南町出身の三上智泰シェフを迎え、2009年にオープンした「ajikura(アジクラ)」というレストランは、年間2万4,000人を集客するという成功を収めている。
■ajikura(アジクラ)
私が「ajikura」を知ったのは、「里山資本主義」の著者である藻谷浩介さんの講演だったが、山間の過疎の町にある「A級グルメ」という言葉の響きに魅力を感じ、行ってみたいと思っていた。
念願かなって先日食べに行ったが、地元産ジャガイモのビシソワーズスープも、パスタも、メインの石見牛のステーキも、期待に違わぬ美味しさだった。
「A級グルメ」構想を発案した邑南町観光課の寺本さんによると、食材の味を活かすために、フレンチではなくイタリアンにしたとのことだったが、素材の美味しさを存分に味わえた。
「A級グルメ」構想はレストランだけでなく、耕作放棄地を使って、地元のベテラン農家に教えてもらいながら野菜を育てる、調理から農業までを学ぶ「耕すシェフ」という活動や、地元のパティシエがサポートした矢上高校のスイーツ甲子園決勝進出などの成果も生まれている。
なお、日本経営合理化協会では、来年2月に邑南町を含む視察ツアー(社長のめしの種探検隊)を現在企画中なので、ご興味のある方はご参加下さい。