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第40回
首都圏「住みたい街」ランキングに劇的異変!
~吉祥寺・恵比寿に続いて「池袋」が3位にランクイン?~

次の売れ筋をつかむ術

2014年版の「みんなが選んだ住みたい街ランキング」(関東版)が発表された。

例年、リクルート住まいカンパニーが、関東(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県)の
居住者を対象にしたWEBアンケートを集計し発表しているものだ。

2020年の「東京オリンピック」の決定で、東雲、豊洲といった東京都江東区を中心とする
湾岸エリアの人気が上昇するかと思ったら、さにあらず。

首都圏の「住みたい街」に劇的な異変が起こっているのだ。

◆「池袋」が、なんと、13位から3位に急上昇!?

ランキングを見て、1位「吉祥寺」、2位「恵比寿」までは定番だが、驚くのは、「池袋」が、
なんと、2013年の13位から3位にまで急上昇したことだ。
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池袋は、JR東日本の山手線、埼京線、湘南新宿ライン、西武鉄道の池袋線、
東武鉄道の東上線、東京メトロの丸ノ内線、有楽町線に加えて、
2008年に開業した副都心線の合計8路線がクロスする巨大ターミナルだ。

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東京都豊島区にある、言わずと知れた、新宿、渋谷と並ぶ山の手の3大副都心の一つである。

一日の平均乗降者数は約270万人を数え、新宿駅、渋谷駅に次いで世界第3位。
駅周辺の繁華街には、毎日、100万人もの老若男女が行き来する。

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しかし、若者から「ブクロ」と呼ばれるこの街は、ダサい、地味、アカ抜けない、
オヤジの街といったマイナスイメージも強かった。

ところが、上述のリクルートの調査のみならず、
不動産・住宅情報の総合サイト「HOME'S」による賃貸物件の問い合わせ数のランキングにおいても、
吉祥寺や恵比寿をも抑えて、池袋は関東エリアで1位に輝いている。

住民数も急増しており、2005年から2010年代にかけての人口増加率は東京都内で第2位の13.61%にのぼる。

街の人気の高まりとともに、ファッションや飲食などの店舗の賃料も2013年より16%も上昇。
今や渋谷の月坪2万6千円を上回り、2万9千円にもなっている。

では一体、何がそこまで池袋を変えたのか?

それを考える前に、池袋の歴史をちょっとひもといてみよう。

◆「池袋」にはなぜ場末のイメージが付きまとうのか?

池袋には、食品売り場の面積日本一を誇る東武百貨店、西武百貨店、丸井、パルコ、
サンシャインシティ60、水族館、ナンジャタウン、ビックカメラといったデパートや商業施設、
エンターテインメント施設があり、女性や家族連れの集客力も強い。

また、おしゃれなミッション系の立教大学やフランク・ロイド・ライト設計の自由学園明日館、
数多くの著名人が眠る雑司ヶ谷霊園といった文化財や緑も豊かだ。

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左)立教大学、(右)自由学園明日館

一方、東京芸術劇場、池袋演芸場といった寄席や小劇場など文化施設も充実している。
アートやデザインに関する書籍の品揃えで定評のあるジュンク堂書店、リプロ、旭屋書店といった
本屋も多い。

それにもかかわらず、池袋には何となく場末のイメージが付きまとうのにはなぜか?
それには戦後の闇市の影響がある。

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この地に闇市ができたのは、山手線や東武東上線などのターミナル駅で交通の便が良かったことに加え、
戦後、埼玉県の朝霞駐屯所に進駐軍が駐屯し、米軍の闇物資が集まったからだ。

1964年の東京オリンピックを前にした国策で1962年に一掃されるまで、現在の池袋西口公園の一帯は、
千軒以上もの商店、バー、飲み屋がひしめく一大歓楽街だった。

また、現在、サンシャインシティの場所には、1958年まで、東京裁判の舞台となった
巣鴨プリズンがあった。

周辺には、戦前、戦後を通じて木賃アパートが密集し、安い住まいを求めて地方出身者が集まった。

その後、1980年代以降は、アジア系を中心とする外国人が多く住み始め、
一部ではミニチャイナタウンの様相を呈している。

現在も、中高年男性をターゲットにした居酒屋街、風俗店が密集した地区もある。

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そういった背景が、大型商業施設も文化施設も集積し、商圏として大いに栄えているにもかかわらず、
池袋のイメージに影を落として来たのだ。

◆「池袋」のイメージが急速に向上した訳とは?

しかし、近年、池袋のイメージは急速に向上している。
特に女性をメインターゲットにした、「Esola池袋」「Echika池袋」「ルミネ池袋」といった

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オシャレな商業施設が続々とオープンし、女性やカップルが安心して、買い回り、食べ回り、
遊び回れるようになって来たことが大きい。

さらに、2014年の秋には「WACCA池袋」も開業する。

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池袋駅周辺には、もともと、女性も楽しめる施設やお店は数多くできていたものの、
ただ街のイメージから、一段低く見られがちだったのだ。

女性客やカップル客の増加によって、レベルの高いファッションの店員、
シェフやソムリエやパティシエ、美容師といった人材も集まりやすくなって、
ショップで働く人たちの意識も高まり、好循環を生んでいるのだ。

また、「乙女ロード」と呼ばれるオタク系女子の聖地が出現し、西の秋葉原として人気を集めている。

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このサンシャインシティ60周辺から東池袋3丁目交差点に至るエリアは、
クールジャパンの文化の苗代とも言えるサブカルチャー系の店舗が集積している。

アニメやゲームに関する書籍やグッズ、アニメ同人誌、コスプレ、イケメンのバトラーが客に仕える
執事喫茶などのお店には、腐女子たちが首都圏はおろか全国各地、海外からも集まって来る。

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多くの店舗は広い通りに面していて明るい雰囲気で、店内は女性向けと男性向けの売り場を分けてあるので、
コミックファンの乙女たちも気軽に立ち寄れる。

古今東西を問わず、街のイメージを向上させるには、淑女が安心して楽しめることが何よりも大切だ。

◆人と人の絆を結ぶ文化イベントが街のイメージを向上させる

一方、行政と地域がタッグを組み、さまざまな文化イベントを開催し続けていることも、
池袋の文化的イメージの向上に大いに貢献している。

豊島区(高野之夫区長)では、池袋の各商店街とともに、
「池袋ジャズフェスティバル」「東京フラフェスタin池袋」「池袋演劇祭」「ふくろ祭り」といった
数々の催しを手作りで行っている。

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それが、池袋に住まう人、働く人、学ぶ人、遊ぶ人をつなぎ、「私の街」であると実感できるように
しているのだ。

そんな街の人と人の絆こそが、安全・安心の街を作り、「住みたい街」としてのイメージを
向上させているのである。

◆1世紀を経て「池袋モンパルナス」の文化・芸術が華開く

戦後、闇市ができる以前、かつてこの地域は、フランスのセーヌ川左岸の芸術の街に例えられ、
「池袋モンパルナス」と呼ばれた。

1920年代の自由主義的な社会・文化を生んだ大正デモクラシーの後、
大正末期から昭和初期の太平洋戦争の直前まで、池袋には数多くの芸術家や芸術家のタマゴたちが住み、
アトリエ村が形成されていたのだ。

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1930~40年代には、「池袋モンパルナス」には100を超えるアトリエ付きの借家が軒を連ねていた。
赤いセメント瓦の建物に大きな窓と天窓があり、当時としては非常にモダンな家も数多くあった。

現在、その名残と言えるものは、当時、最も大きかったアトリエ村「さくらが丘パルテノン」の跡にできた
児童遊園だけだ。

しかし、往時の文化的なにぎわいを取り戻そうとする地域の人たちの活動によって、
新たな街の息吹がマグマのように蓄積されて来ていた。

そこに、2013年3月、東急東横線と東京メトロ副都心線の相互直通運転の開始により
利便性が高まったことで、池袋の素晴らしさが見直され、
あたかもお祝いにシャンパーニュのボトルを開けたかのように解き放たれたのだ。

2020年の東京オリンピックの開催に向け、1世紀の時を経て、池袋に文化・芸術の華が再び開きつつある。

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