この数字は、楽天市場が中長期計画の中で掲げた、年間流通総額の目標額である。
2011 年12 月に、初めて年間流通総額1 兆円を突破した楽天市場は、今後3 ~ 5 年で、現在の10 倍の額を目指すことになる。
楽天市場は、1997 年5 月1 日に開設して以来、14 年7 ヵ月で1 兆円を達成したわけだが、その3 分の1 の期間で流通総額を加速的に伸ばすということで、かなり強気の目標設定であることは間違いない。
だか、三木谷社長は『決して実現不可能な数字ではない』と語り、その計画達成に向けて、スマートフォンやタブレット端末への対応、そして物流支援、海外展開の強化―の3本柱を成長ドライバーに据えて、需要拡大を企図している。
具体的には、まずデバイス対応では、昨年11 月にカナダの電子書籍大kobo 社を買収。今年春にも、電子書籍サービス利用者に向けてのショッピング提供を開始する。またタブレット端末向けには、「楽天レシピ」を充実させて、ショッピングにつなげる仕組みを構築するという。
一方、物流支援の強化では、今年から自社の物流センターを開設したり、既存の物流 センターを借りることで、楽天が主体となって物流サービスを出店者に提供していく構えである。
新しい物流センターの開設で、翌日配達サービス「あす楽」を全品対応させる考えで、将来的には『注文後、5 時間以内に商品を届けるようにしたい』とも語っている。
そして、海外展開については、楽天が物流サービスを提供することで、海外への輸送コ ストを低減。海外発送の手間や割高感による障壁を低くし、出店者の海外進出を後押しすることで、海外への流通額を高める―としている。
楽天市場は昨年末、30 時間(12 月13 日~15 日)限定のセールスイベントで、1日 の流通総額100 億円を達成したり、テレビCM や電車の中吊り広告を展開した今年3 月4 日の「楽天スーパーSALE」では、1 日で130 億円を突破するなど、ここ数年、成長を加速させる様々な施策を繰り出している。
それだけに三木谷社長の意気込みが、様々なメディアを通じて伝わってくる。 『楽天を真のグローバル企業に飛躍させる』という想いは、半端なものであるはずがな い。
世界を見渡せば、米イーベイが運営する「eBay」の年間流通総額が、2010 年で約5 兆円、中国アリババの「タオバオ」が約5.2 兆円など、まだ前を走っているIT 企業が群れを成している。
1 兆円を達成したからこそ見えてくる背中に、「追いつき、追い越せ」と、エンジン全開 でまい進している。楽天は今、新しいステージへ駆け上がろうとしている最中なのだ。
国内では、他社の追随を許さないほど圧倒的な地位を築いた同社が、海外のグローバル企業とどう戦うのか―。 国内敵なしで、更なる成長の場を求めて米国へ渡ったダルビッシュ有投手もしかり。両者の今後に期待を込めて注目していきたい。