■新しいタイプの製造業
日本経営合理化協会のシリコンバレー視察で、「オムニラボ(Ohmni Labs)というロボットを製造している会社に行ってきたが、ここは以下3つの点が注目される。
1)電子部品以外の筐体製造を3Dプリンタで行っている
2)システムでいえばOSのような基本ロボットを作り、アプリのような周辺装置を自由に付加できるオープンな仕組み
3)システム、周辺装置を一緒に構築できる「カンブリア(KAMBRIA)」というブロックチェーンプを使ったコミュニティ
工場兼オフィスに訪問して驚いたのは、数多くの小型3Dプリンタが棚に並んで、工場の生産ラインのように動いていたことだ。
最初に使用していた市販の3Dプリンタは、24時間動かし続けていると約2ヶ月半でいろいろなところに故障が発生し、それを改良していくと、その後3年間は壊れなくなっている。
この改良により3Dプリンタのノウハウを得たため、今は、半分は自社開発の3Dプリンタで製造しており、自社開発3Dプリンタは市販のものの2.5倍の製造能力があるため、現在は月に1,000台の生産能力となっている。
■ロボット「オムニ(Ohmni)」
ここで製造されている「オムニ(Ohmni)」というロボットは、iPadのような顔代わりのディスプレイ(カメラ、スピーカー付)がついたキックボードのような形をした遠隔操作で移動できるロボットで、一人暮らしの両親をケアするために、子どもが遠隔からコニュニケーションをとる見守り用途や、学校に登校できない子どもの代わりに教室に行き、友達と一緒に授業を受ける用途などで使われているが、オフィスの受付、倉庫の巡回などビジネス用途にも応用できる。
そのため、オムニラボ社では基本的なロボット筐体のみを製造し、各用途に必要なセンサー、腕やライトなどのオプション部品など周辺装置、そのシステムは協力関係にある会社に自由に作ってもらえる仕組みを採用、各用途に特化したロボットにカスタマイズできる。
■カンブリア(KAMBRIA)
オムニラボは協力企業へのデベロッパーキットの配布を1ヶ月前に発表しているが、ノウハウはあっても、開発するインセンティブを持てないために参加してもらえない大学や企業を巻き込むために、ブロックチェーンを使った「カンブリア」というパートナーのコミュニティを作っている。
これは、開発を依頼する会社に対してトークン(このコミュニティ内で流通する代替通貨)を発行するもので、これにより動きが早くなるという。
このトークンはビットコインのようにいろいろな場所で買い物ができるものではなく、カンブリアというコミュニティ内でしか使えないが、2000年頃のITバブル期のストックオプション的な面もあるようだ。
製造方法、商品構成、協力企業との関係など、シリコンバレーでは次々に新しい試みが生まれている。
======== DATA =========
●オムニラボ(Ohmni Labo)
●カンブリア(KAMBRIA)