日本経営合理化協会で6月に開催する「リヨン・パリ視察ツアー」で、創業者にお話を伺う予定になっている、フランス発のAIベンチャー企業「ミストラル(Mistral )AI」は、日本語でも使えるOpenAIの「ChatGPT」に相当するフランスの生成AIだ。
ミストラルを立ち上げたのはGoogle傘下のDeepMind社で、画像認識や医療AIを研究していたアルチュール・メンシュCEO、Meta AI Researchで大規模言語モデル「LLaMA」開発に主要メンバーとして参加したギヨーム・ランプル、Meta出身の研究者ティモテ・ラクロワCTOの3人で、個人情報保護(GDPR)を守りつつAIを普及させることで、米中に依存しない技術基盤を育てることや、使いやすいサイズで最高性能を出すことを目指している。
5月に公開された中型モデル「Mistral Medium 3」は処理能力を確保しながら価格を大幅に下げ、使用料が従来の高性能モデルの1/8と、高い実力と手頃な料金を実現して注目を集めている。
ミストラルは、巨大資本で競い合う米テック大手とは異なるヨーロッパ発の「開かれたフロンティア」という取り組みも行っている。
これはオープンソースのリナックス(Linux)OSのように、多くの開発者が参加することにより機能が急速に進化していくもので、パソコンや自社サーバーにも入れられる軽量版や、学習済み重みなどをコミュニティにオープンソースとして公開している。
ヨーロッパではアメリカに対抗するため、フランス政府やEUがAI向けインフラ整備に巨額補助金を投じており、EUと取引をする日本企業では、EUの個人情報保護規則(GDPR)に配慮したデータ方針と合わせて使えることをメリットとして導入されている。
ヨーロッパ顧客向けにマニュアルを作成する場合などには、アメリカ製の生成AIよりも安く、使い勝手がいい。
■ミストラルが与える示唆
今年話題となった中国のDeepSeekやフランスのミストラルなどを見れば、用途を絞れば中型モデルでも十分な場面が多く、生成AIは必ずしもアメリカの巨大モデル一択ではないことが示されている。
ミストラルやリナックスOSのようなオープンソースの開かれたシステムは、閉じた開発では得られないスピード感のある学習効果を生むし、規制とコストの両面で、EUモデルを使うことで米中への依存度を下げられるというメリットもある。
生成AIは「高性能か低コストか」の二者択一から「最適サイズを選ぶ」時代へ移っている。
======== DATA =========
●ミストラル(Mistral )AI
https://mistral.ai
●EU 一般データ保護規則(GDPR)について(ジェトロ)
https://www.jetro.go.jp/world/europe/eu/gdpr/