スタンフォード大学の経済学者3人が、数万社の企業の数百万人の従業員について、年齢・職種を含む詳細な匿名化データを分析した最新研究では、AIの普及以降にAIの影響を強く受けたのはキャリア初期(22〜25歳)の労働者で、雇用が相対的に13%減少したとされている。
雇用の落ち込みが目立つのは、AIが人の仕事を拡張する場面よりも作業そのものを自動化できる職務で、20代前半を中心とする若手のソフトウエア開発者、受付担当者、翻訳者、顧客サービス担当者などの「大幅な雇用減」が確認された。
2022年終盤から2023年初め以降で見ると、22~25歳のソフトウエア開発分野の従業員数は、今年7月時点で2022年終盤のピークから20%近く減っていたが、この分野の26~30歳の従業員数はほぼ横ばい、より高い年齢層の従業員数は引き続き増加していた。
これはソフトウエア上級開発者は、プログラミングコードを扱えない人々との共同作業の進め方や、会社が望む製品を生み出す方法を会得しており、これらは引き続き会社にとって極めて高い価値があるためで、これは今後も自動化されない可能性があると研究結果からは見られている。
看護のようにAIが人間に取って代わるのではなく、人間を補助できる分野では、若年層の雇用が改善していることを示す証拠も見つかった。
しかし、AIに代替されないスキルを磨く方法が、AIによる自動化で失われてしまう仕事に長く従事することだとすれば、「労働市場のパラドックス(矛盾)」を生む。
また、経験を積んだ現在の従業員が退職した後は、誰がその穴を埋めるかという問題も出てくる。
この研究は、労働者の年齢や職業に関する詳細な情報が含まれる給与計算サービス会社ADPの記録を使って、AIが労働市場に与えた影響の詳細を把握しており、米労働省が月次の雇用統計に使用する家計調査よりもはるかに包括的なものだ。
また、現時点ではAIの影響が賃金より雇用に強く出ている可能性があり、リモートワークの可否や大卒比率の高低にかかわらず、このパターンはおおむね当てはまったとしている。
■人を育てるAI
AIが便利になればなるほど上記の研究結果のような問題が出てくるが、私は今年に入ってから「人を育てるAI」を提唱して、数社に個別指導をしている。
人間がバケツリレーで水を運ぶより、ポンプやホースを使った方が便利で効率的だし、穴を掘るのもパワーショベルの方がいいのと同じように、面倒な事務処理はAIを使うことが主流になると思われるが、人間がやるべき仕事も今後は明確に分かってくる。
時間だけかかる処理はAIに任せて、次のステップの仕事をするための知識や技術を身につけるためにAIを活用することが今は重要で、それにより社員の人達は黙っていてもAIを効率的に使って仕事をするようになる。
今はAIを使って「人を育てる」時だと思っている。
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●Canaries in the Coal Mine? Six Facts about the Recent Employment Effects of Artificial Intelligence
https://digitaleconomy.stanford.edu/publications/canaries-in-the-coal-mine/





















