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人間学・古典

第99講 「帝王学その49」
心を修むるの要は三つ、曰く仁、曰く明、曰く武。

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学


【意味】
「心を修めるための3要点」は、思いやり・明晰さ・威厳である。



【解説】
 「宋名臣言行録」からのものですが、『資治通鑑』294巻の編者として有名な北宋時代の文人政治家・司馬光(1019~1086)の言葉で、精神修養をする方向性を示したものです。
 掲句は基本的には「心を修めるための3要点」ですから、「仁」「明」を中心に心を高める句と捉えがちですが、「武」も加わっていますから、もう一段高い視点からの「上に立つ者の実践的な総合統治力」を養う句と考えたほうがよさそうです。

 まず『仁』とは、儒教では第一番目に掲げられる徳目です。人偏に二と書くことから、お互いに「相手の心の状態を推し量る配慮」の意となるわけです。ですから、余裕のある配慮ができれば器量の大きな人物となり、できなければ器量の小さな人物となります。
 仁の中でも、自分から周りにする配慮を「与仁=与える思いやり」といい、この仁は謙虚な振る舞いや礼儀マナーに発展していきます。これとは逆に上司や社会から自分が頂く配慮を「受仁=受け取る思いやり」といい、この仁は感謝報恩のエネルギーに繋がります。
 誰もが「自分は思いやりのある人間」と過大評価しがちですが、これですと傲慢に繋がる危険も生じますから、「過分な仁愛を頂いている人間」と思うことが、上に立つ者の身につけるべき心構えとなります。

 次に『明』とは、日と月の組み合わせですから「明るさ」となります。物事に対して明るい未来対応力を維持できる能力です。言志四録にも「胸次清快ならば、即ち人事百艱も亦阻せず」(胸の内が清く爽快であれば、世の中の多くの困難は障害にならない)とありますが、困難に遭遇しても沈み込まないで笑顔で対応できる明るさを云います。

 最後の『武』とは、表面的には武力や腕力の強さですが、イザ鎌倉という時の精神的な強靭さでもあり「へこたれてしまわない強さ」となります。これは昔の武士が真剣勝負で鍛えたように、現代人も「困時捨命心」(困った時に命を捨てる覚悟)で鍛えることを意味します。

 以上「心を修めるための3要点」を見てきましたが、君主としてこの中の何か一つに偏るのではなく、全方位型の総合能力として身に付けることが理想的です。またその総合力も、地位に上がるまでだけではなく、そこへ上がってからの精進の継続が必要となります。
 ちなみに、自分の地位についての見方には2通りあります。
1つは、「仁」「明」「武」の3つの能力を既に持ち合わせているから、現在の地位を得ているという見方と、もう1つは現時点では3つの資質に欠けるが、今後の精進成長を期待されての地位であるという見方です。一般的に昇進させる側では後者のケースが多いものですが、登用された者が前者と勘違いをしてその地位に慢心するようでは、成長が止まり折角得た地位も手放すことになります。
  「慢心は成長を止め、謙虚は成長を進める」(巌海)

 

杉山巌海

第98講 「帝王学その48」 君臣相遭うこと魚水に同じき有れば、海内安かるべし。前のページ

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