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採用・法律

第26回 『名義株の整理』

中小企業の新たな法律リスク

 太田社長は、75歳の遺言適齢期かつ事業承継適齢期を迎えています。
 
* * *
 
太田社長:自分の遺産相続もそうですけど、事業承継で具体的に何かをする前に、色々整理しておいた方がいい事があるように思うのですけど。
 
賛多弁護士:いまさらですが、御社の創業はいつでしたでしょうか?
 
太田社長:昭和50年くらいです。
 
賛多弁護士:創業者はお父様でしたよね?
 
太田社長:そうなんです。父は早く亡くなったので、創業10年である昭和60年頃から私が社長として経営しています。引継いだ直後から色々ありましたけどね。
 
賛多弁護士:まずは株主を整理しておくことが必要ですね。株式の承継と経営の承継が事業承継の中身なので、誰が株主か分からないようでは、事業承継は始まりませんから。
 
太田社長:私が父から引継いで全株式の70%を持っています。他の株主は‥‥誰だったかな‥‥。母以外は父の兄弟姉妹ですね。たしか、創業の時は当時の商法で父一人ではなく、親族の何人かに株主になってもらったのではないかと思います。ただ、母以外の父の兄弟姉妹については、父がお金を出して、名前だけ貸してもらったと聞いています。
 
賛多弁護士:お父様とお母様以外は、いわゆる名義株主、つまりお金は出していないが、株主としての名義だけ貸した株主ということですね。創業時の名義株主はみなさんまだご健在ですか?
 
太田社長:父の兄以外の弟と姉妹はみんな生きていています。また、記憶もはっきりしています。ですから、彼らは名義だけ貸したという事情はわかっていると思います。少なくとも、これまで配当したこともないし、株主総会もやっていないので、自分が本当の株主だと思っている人はいないでしょう。
 
賛多弁護士:お父様のお兄様にはご相続人がいらっしゃいますよね。相続人が株主になっているのでしょうね。
 
太田社長:そうだと思いますが‥‥。でも当社の株は自由に譲渡できないようになっているので、相続人は株主になっていないのではないのでしょうか。その場合はなんらか譲渡したいとして、会社に承諾を求めたり、知らせたりしてくると思いますが、これまでそんな知らせを受けたことはないですし‥‥。
 
賛多弁護士:いえ、相続による取得は、その譲渡の制限の対象にはならないのです。
 
太田社長:なるほど。もっとも、父の兄の相続人である息子、私の従兄にあたりますが、毎年正月には会っています。当社の株式の話をしたことはないのですが、事情を話せば理解してくれると思います。
 
賛多弁護士:では、ご親戚の名義になっている株式を、本来の株主である太田社長に名義変更しておく必要がありますね。その上で、その旨株主名簿に記載しておきましょう。
 
太田社長:名義株を本来の株主に変更する手続きはどうするのですか。
 
賛多弁護士:何か法定の手続きがあるわけではありませんが、名義貸主と名義借主の間で、覚書を交わしておくのが一般的です。本来の姿に戻すだけで、両者間で売買がされるわけではないので対価の支払いは不要ですが、長年の名義借用に対するお礼として、多少の心づけを渡すこともあるようです。
 
* * *
 
株主の把握と整理は事業承継の第一歩です。日常業務ではすぐに必要がないものも、意識して整備していきましょう。
 
 
執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉
 

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