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<事例―17 ミツカンの納豆「金のつぶ」シリーズ(B2C)>皆が諦めていた要素を解決し、さらに付加価値を加味した商品づくりで成功した…それがミツカンの納豆「金のつぶ」シリーズだ

酒井光雄 成功事例に学ぶ繁栄企業のブランド戦略

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●些細なことだと誰も改善しなかった要素
 
 日本の伝統食品として、今では全国で食されるようになったのが納豆だ。納豆を食べる際に、誰もが気にしている問題点がありながら、どのメーカーも本気になって改善に取組まずに来たことがある。
 
 ひとつは、納豆の上にかけられているフィルムをはがす際にベタベタして、捨てる際に糸を引いてしまうことだ。ふたつ目は添付されているタレが入った小袋が空けにくい点だ。
 
 納豆を製造販売するメーカーの多くは地場の中小企業が多く、店頭では価格訴求で販売されるため利幅が少ない。そのためこうしたデメリットに気付きつつも、改善策に取組む企業は存在しなかった。
 
 さらに納豆には独特の匂いがあるが、納豆に匂いがあることは当然視され、改善しようと考えるメーカーも存在しなかった。
 
●ミツカンが「金のつぶ」シリーズで取組んだこと
 
 生活者が日常的に納豆を食す際にデメリットだと感じつつも、どのメーカーも本気で改善に取組まなかった上記ふたつの問題の解決に、本気で取組んだのがミツカンだ。
 
 同社では「タレの小袋が開けにくく、食卓や服を汚すことがある」「はがしたフィルムがベタベタして捨てる際に面倒」などをいう生活者の声をかねてより把握しており、こうした不満を解消する簡単・便利な納豆を開発する必要性を感じていた。
 
 そこで取組んだのが2008年に登場した『金のつぶ あらっ便利!』で、タレの小袋とフィルムをなくし、タレを箸でつまんで納豆に混ぜるだけで食べられるという、画期的な商品だ。
 
 同社はさらに1年以上かけ2万個の納豆菌の中からにおいの元をつくらない「N64菌」を発見し、2000年3月に「金のつぶ におわなっとう」を世に送り出す。
 
 「金のつぶ におわなっとう」は発売から3ヶ月にして納豆品目別シェアで1位となり、その後「金のつぶ」シリーズは商品アイテムをさらに拡張させていく。
 
 『金のつぶ あらっ便利!』をさらに改良し、ふたの上部に液体のタレを入れてフィルムを貼り、ふたを割ると液体のタレが出てくる「金のつぶ パキッ!とたれ」を2012年1月に投入している。
 
 
<ミツカンの「金のつぶ」シリーズの事例に学ぶこと>
 既存商品が抱える問題点を解決するだけでは優位性に乏しく、ブランド価値を生み出す付加価値の創造には結びつかないことが多い。問題点の解決はマイナス要素をゼロにはできても、プラスの要素にはならないからだ。
 ミツカンは普通名詞で競う納豆の業界に、「金のつぶ」という固有名詞によるブランド化に取組んだ。 同社はブランド資源として既存納豆商品が持つふたつのデメリットの解決に加え、「におわない」「ほね元気」「超やわらか納豆」などの付加価値づくりに取組み、独自の優位性づくりに成功している。
 
 
 
 
 
 
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