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採用・法律

第111回  賃上げする際の留意点

中小企業の新たな法律リスク

昨今の賃上げの波を受け、建設業を営んでいる田中社長の会社でもいよいよ賃上げに取り組もうと考えて賛多弁護士に再度相談に来られました。

* * *

田中社長:最近、私どもの建設業界でも少しずつ賃上げする会社が増えてきています。原材料費や光熱費の高騰で厳しい業界ですが、著しい人手不足のため優秀な人材の確保のためにも賃上げをしなければならないと考えています。賃上げをする場合の留意点を教えていただけますか。

 

賛多弁護士:たしかに賃上げは、最近の物価高に対する従業員の生活を安定させ、優秀な人材の確保や引き留め、モチベーションアップにも繋がるため素晴らしいことです。しかし賃上げは、その目的やコスト面を考慮したうえで、そもそも賃上げを実施するか、どのような方法でどの程度賃上げするかを慎重に検討されるのがよいと思います。

 

田中社長:当社の賃上げの目的は、物価高で従業員の生活が厳しくなっておりそれを守ることで従業員の定着率を図るためです。それと最近は従業員のモチベーションが低下しているためその向上のためです。現時点ではベースアップを検討しておりますが実施にあたり気を付けることはありますか。

 

賛多弁護士:ベースアップは全社員の基本給を一律に挙げるものですが、それに伴い基本給をベースに計算される残業代、賞与、退職金、社保などの負担も増加します。しかも一旦増加した人件費の水準が将来的にも維持されるため、業績が悪くなった時のことも考えて長期的な視点をもって検討する必要があります。また、従業員の定着の観点からは同業他社の賃金水準なども考慮にいれてベースアップ率を決定すべきですね。

 

田中社長:業績が悪くなったら基本給を元に戻せないのですか。

 

賛多弁護士:一度上げてしまった基本給をもとに戻すのは簡単ではありません。基本給は従業員の生活の基盤なので基本給を下げることは生活に支障がでるためモチベーション低下や離職のリスクが高まります。また賃金水準を下げることは就業規則の不利益変更に当たり、就業規則を不利益に変更するには合理性が認められなければなりません。合理性のない就業規則の不利益変更は労働条件として労働者を拘束できません。

 

田中社長:どのような場合に就業規則の合理性は認められますか。

 

賛多弁護士:合理性の有無は、①労働者の受ける不利益の程度、②労働条件の変更の必要性を基礎に両者を比較衡量し、その他の事情も加味して判断されます。特に基本給の減額となると高度の変更の必要性が要求されます。労働者の不利益の程度やその他の事情にもよりますが、一般的には赤字に陥るなど経営状態がかなり悪くならない限り認められない場合が多いです。

 

田中社長:それは厳しいですね。将来基本給を引き下げるのが難しいことを頭にいれて賃上げ率を慎重に検討したいと思います。

 

賛多弁護士:それがよいと思います。またモチベーションの向上も賃上げの目的ということですが、年功序列で競争やチャレンジ精神が失われてモチベーション低下している場合にはただ賃上げしてもモチベーション向上に繋がらない可能性が高いです。その場合には定期昇給や成果型の賃金制度を取りいれることを検討してもよいかもしれません。物価対応への即効性はありませんが、やる気の向上につながると思います

 

田中社長:わかりました。モチベーション低下の原因を調査して、原因によっては定期昇給や成果型の賃金制度も検討したいと思います。

 

賛多弁護士:それからいずれの賃上げ方法をとるとしても人件費コストが重くなります。そこで賃上げをした会社が税制優遇を受けられる賃上げ促進税制の適用も検討されるとよいと思います。また、最低賃金の引上げにより活用できる助成金や補助金があるため要件を満たすのであれば是非活用されてください。

 

田中社長:それは良いことを聞きました。早速検討したいと思います。

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