さて、今回は「The プレジデンシャル・イメージ A to Z」のC。カラー(collar)=襟の第二回目。顔立ちを引き締める襟元です。
イメージコンサルタントという仕事をし、トップエグゼクティブ、経営者、ビジネスパーソンに対して装いのアドバイスなども行う立場にいると、良く聞かれる質問が幾つかあります。その一つが、「ビジネスパーソンの装いで “さすが(この人、分かっている)!”と思う人に見る共通アイテムを一つ教えてください」です。実はとても回答に困る質問です。何故なら、本来、外見や見た目の印象とは、各部分毎に最高だったとしても、全身のトータルバランスがとれていなければ意味をなしません。それに、装いはコミュニケーション、一人で見た時は良くても、その人が身を置く場の背景・場を共にする他の人々の種類や雰囲気、その時の目的に相応しいものでなければ、良いと評価されないのです。しかし、一つに絞らなくてはいけないのであれば、敢えて言うと「シャツです」と答えます。
シャツはその人の全体イメージを、清潔感高く、知的に洗練させ、引き締めます。中でも襟の存在は、正式さの象徴。その人の顔つきに一瞬にしてキリリとした強さを加える力を持っています。そう、ビジネスシーンの印象を左右する重要なポイントなのです。肩や身頃のサイズは当然ぴったり合っていて、最適な襟の形や高さ、ボタンを開けた時の首と襟元のバランスが絶妙なシャツというのは、お顔を引き締める最高のフレーム効果を成し、その清潔感と精悍さは、他の服では表すことが出来ないほど。それに襟元がしゃきっとした良いシャツを身につけると、気持が引き締まる思いがするのもビジネスシーンでは欠かせない大きな効果です。
このように他者にも自己にも大きなプラスの効果を及ぼすシャツ。私はNYに永住した頃、これからこの場所をベースに仕事を展開して行く覚悟を決めた時、最初に用意したのが、スーツでもバッグでも靴でもなく、自分にとって納得のいくシャツでした。それまでシャツを着る機会が少なかった私にとって、面白い心境の変化だったと今でも思います。しかし振り返ってみると、それは日本国内で仕事をしていた時に求められていた「柔らかさ」よりも、プロフェッショナルとしての姿勢、エグゼクティブ対象のコンサルタントとしてのよりグローバルな洗練、アウトラインの明確な強さのある「顔つき」を求められることを実感したからだったと記憶しています。
シャツ専門店に出向き、様々な形や素材を試し、襟の形、襟の立ち具合や空き具合、全てにおいて細かなチェック。さらにはサイズ調整の際に、本当に細かな部分まで指示をする私に、担当された方は「そこまで気にしなくても大丈夫ですよ」と半分あきれ顔。その相手に、私の職業と弊社のこと、ここまで徹底的にやる理由を伝えると、至極納得。そこから、「あなたのプロフェッショナリズムに相応しい物を作りましょう。あなたの装いがあなたの仕事とその実力を表しますからね」と、多くの目の肥えたNYのエグゼクティブ達を顧客に持つその店が、こちらの意志と意向を尊重する姿勢を見せてくれたことで、アメリカで仕事をしてゆくことを改めて覚悟し、自信につながったと実感した経験でした。後日、出来上がってきたシャツを着た時、自然と背筋が伸びた心地良い緊張感、襟を整えて鏡の中の自分を見たら、自分の表情が凛としていたこと、今でも記憶に鮮明です。正に「襟を正す」とは、顔つきも精神も引き締まることなのです。
自分の顔つきが引き締まり、きりりと力強く、スマートに洗練されて見えること、そして清潔ではつらつとしていること、これらはグローバルなトップに相応しい印象です。そしてこれらの印象を左右すし演出する顔のフレームとなるのが襟元。4月で新年度を迎えました、是非とも「襟を正し」新たな凛々しい顔つきで、更なる躍進して参りましょう。