Dress for Successという言葉を聞いたことがあるだろうか?それは、読んで字の如し、「成功の為の装い」のことだ。本来の素晴らしいソフトを伝達し成功を手にする為に、情報力として、外見・装いを戦略的に使う。中でも、社長の為のDress for Success(成功の為の装い)は、トップとして必須の仕事力であり、自己管理力、そして情報発信力である。装いには、その人の意志、経験、価値観が否応なしに表れる。だから人は見た目の第一印象で相手を判断するのだ。
4月30日号の日経ビジネスに私のインタビュー記事が掲載された。その号のタイトルは「社長の情報発信力」。まさに今、そしてこれから、日本の社長達がグローバル社会の中で真剣に考えるべきことであり、多分一番苦手な分野、「自分は別にいい」「特別な場面が出てきた時にやればよい」と逃げ腰になり、見て見ぬふりをしてきた部分なのではないだろうか。しかし、アピアランス(外見)やノンバーバル(非言語)コミュニケーションによる戦略的イメージとそのマネジメントの在り方、その中でも最も目に見える結果の出やすいDress for Successは、この社会の中で益々の発展、新たに展開し、生き抜くことを考える社長にとって、今まさに取り入れるべき重要課題なのだ。
少なからずアジアとの取引をしている会社が殆どであろう昨今。社長という立場の方が、アジアを始め、北米、ヨーロッパなど、言語の違う国でビジネスをしてゆくにあたり、最も重要なのが見た目であることは言うまでもない。一目であなたを一企業の社長として信頼に値する存在であると理解してもらう第一印象から始まるイメージ戦略こそが、チャンスの扉を開く。その際に、何をおいても「社長らしさ」が不可欠であるのだが、この当たり前なことが、どうも全く出来ていないのが事実。イメージアップという名のスタイリング提案に欠落している、恐ろしい落とし穴だ。
Dress for Success、その“成功”とは誰にとっての、どのようなことなのか?どのようなイメージがその社長の会社、業種のイメージにマッチし、関わる人に求められ望まれているのか?そして、その社長個人の個性や考え方、生きてきた背景、そして今の生活背景を最も良い形で反映できる方法はどのようなものなのか?そして、未来への展望がどのような物であり、その意志を表現することのできる方法とはどのような物だろうか?これが装いに表現されていることが大切なのだ。一介の会社員ではない、御自身というたった一人の存在が、周囲から認められる「社長」としてある為の客観的なWhyとHowがfujiiして初めてDress for Successとなるのだ。
確かに社長という立場の存在感に共通のイメージ、求められるイメージという定義はある、しかし、それはあくまでガイドラインであり、出来ていて当然なこと、そしてまたそれが全てではない。何故なら、世の中で仕事をする人を分母とした際に、非常に少ないパーセンテージである「社長」は特別な存在であり、誰かと同じ、誰かを同じ手法を使って解決できる程簡単なことではないのだから。そう考えると、人を動かす力を持つ立場である社長のイメージやアピアランスとは、どれだけ重要で、「お洒落」とは大きく違い、まさに完全なる仕事力・自己管理力・情報発信力であることがご理解いただけるだろう。そして、それは初対面の0.1秒で判断されてしまうということも是非とも心にとめてほしい。
装うことに苦手意識の多い男性経営者は非常に多くおり、「お洒落」という言葉に過剰反応する人も多く見受けられる。だから、今や不思議な二極化がなされており、「人は見た目じゃない」と頑なになるタイプと、社長としての戦略的イメージマネジメントの本質からずれて、場違い勘違いの「お洒落(スタイリッシュ)」に向い、個性を出したつもりが反対に不必要な疑問符を相手に抱かせてしまっているケースなど、非常に多く目にするのである。
全てにおいて忘れてはならないのは、社長として「どうしてそうする必要があるのか?」御自身にとってそしてあなたの会社にとっての、本当の理由とその後ろに存在する哲学だ。何故なら、社長であるあなた御自身が御自身なりのビジネス哲学、人生哲学をお持ちであるのと同様。どんなに似合っている物体で、どんなに高級だったとしても、あなたの哲学を表せない装いは、ビジネスの成長を妨げる邪魔物であり、ノイズそのものだからだ。
アメリカでは「見た目も仕事のうち」と理解されている。当然ながら、世界はあなたを見た目で判断してくる。それは御洒落か否かではなく、立場と場を理解した相応しい装い方を知っているか(教育、エチケットのレベル)?自分の懐に入れて大丈夫か(コミュニティの在り方)?価値観の相違は(経験値・ビジネスセンス)?など、社会の中のその人の立ち位置を図る指針として。
Dress for Success、それは仕事力・自己管理力・情報発信力。他の誰でもない御自身が社長あることの哲学、そして生き方を、初対面の0.1秒で相手に伝えるイメージ戦略であり、装い方。「何かある時に」ではなく、直ぐにでも始め、少しずつ相応しさを身に付け、それがこなれてこそ、あなたの社長としてのさらに価値を上げ、ビジネス力としてますます無言の力を発揮してくれるはずだ。