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採用・法律

第120回 新NISAって何?

中小企業の新たな法律リスク

新NISAって何?

前回(第104回)、令和5年度税制改正のうち、贈与税の改正について賛多弁護士から有益な情報を得た佐藤社長だが、もうひとつ、どうしても知りたいことがあったようで・・・

 

佐藤社長:令和5年度の税制改正に「NISAが新しくなる」というものがありました。そもそも、NISAとはどのようなものですか?

 

賛多弁護士:NISAとは、イギリスの個人貯蓄口座を参考にした少額投資非課税制度で、日本在住かつ口座開設年の1月1日現在18歳以上の個人であれば対象となります。

 

佐藤社長:少額投資非課税制度・・・具体的には、何が非課税となるのですか?

 

賛多弁護士:例えば、株式投資信託に投資した場合、受け取った「分配金」と、売却時の「値上がり益」がそれぞれ非課税になります。

 

佐藤社長:配当と譲渡については所得税が課税されない、ということですか。つまり、投資をしても売却するまでの間は税金がかからず、確定申告も要らないのですね。

 

賛多弁護士:令和5年までは非課税保有期間というものがあり、最長で20年または5年しかその恩恵を受けられませんでした。しかし、令和6年からはそれが無制限となりますので、佐藤社長のお見込みの通りです。

 

佐藤社長:では、なるべく多額の投資をした方が得ですね!

 

賛多弁護士:実は、投資額には制限があります。投資対象となる商品により「つみたて投資枠」と「成長投資枠」という2つの枠があり、前者の一年間の投資枠は120万円、後者のそれは240万円、合計で360万円までとなります。また、非課税保有限度額というものも設けられていて、投資元本の残高が、両枠の合計で1800万円に達するまで、うち成長投資枠は1200万円に達するまでは投資ができます。

 

佐藤社長:毎年の制限額と累計の限度額があるのですね。ちなみに、投資した資産を売却した後の注意点はありますか?

 

賛多弁護士:令和6年からは、非課税保有限度額の再利用が可能となりました。例えば、10年前に投資をした時の価額、いわゆる簿価が150万円の資産を売却した場合、翌年にその150万円の枠が復活しますので、新たな投資が可能となります。言い方を換えれば、1800万円の範囲内であれば、繰り返し非課税での投資ができるわけです。ただし、翌年に非課税枠が復活しますから、短期間での売買には適しません。

 

佐藤社長:最近、賛多弁護士には相続の相談をたくさんしてきましたが、相続が生じたときには、NISAに投資した資産はどうなるのですか?

 

賛多弁護士:NISA口座で資産を運用していた方が亡くなった場合には、その相続が生じた時点でNISA口座にある資産は払い出されたものとみなされて、相続人の口座に移管されます。その際、仮に相続人自身がNISA口座を開設していたとしても、そのNISA口座に組み入れることはできず、相続人の特定口座または一般口座に移管されます。

 

佐藤社長:その際の税金についても教えて下さい。

 

賛多弁護士:相続が発生した時までの含み益には、税金は課されません。ただし、その時点での評価額、すなわち、相続開始時における時価をもって相続財産には加算されます。また、相続人の口座に資産が移管された際には、相続発生日における時価が資産の取得価額となり、それ以降の課税関係は通常の株式投資などと同様の取り扱いになります。

 

* * *

NISAの制度は、平成26年に一般NISA(成長投資枠に相当)が創設され、その後、平成30年につみたてNISA(つみたて投資枠に相当)が追加で創設されましたが、令和6年1月からその制度が拡充されました。

これは、岸田政権が実現に向けて取り組みを進める「新しい資本主義」、「貯蓄から投資へ」「資産所得倍増プラン」の具現化です。国内には約2000兆円の家計金融資産がありますが、その半分以上が現預金で保有されており、株式や投資信託などへの投資は約244兆円しかなく、投資家の数も約2000万人にとどまっているという統計があります。

その影響もあってのことか、日本は諸外国と比較をしても家計金融資産の増加割合が低い傾向にあります。

成長と資産所得の好循環をもたらすためにも、また、人生100年時代における多様なライフスタイルで各人が豊かに暮らしていくためにも、自助努力による家計金融資産の拡大は必要です。また、計画的な資産形成にはiDeCo(個人型確定拠出年金)の活用も検討の対象となります。ライフプランや経済環境、資産状況などに応じて各種制度をうまく使い分け活用をすることが必要でしょう。

執筆:鳥飼総合法律事務所 税理士 田坂 尚靖

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