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- 中小企業の新たな法律リスク
- 第42回 『色彩の持つブランド力を守るには?!』
地方都市で、その街ではみんなが知っている老舗ケーキ店3店舗を経営する黒沢社長が賛多弁護士のところにやってきました。
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黒沢社長:今年はいろいろありましたが、クリスマスシーズンが近づいてきました。ケーキ店にとっては忙しい季節です。私の店は創業以来、特徴的な黄緑の包装紙でやっているのですが、最近、私の店にそっくりな包装紙を使うケーキ店が近所にできました。なんとかならないでしょうか。
賛多弁護士:私も賛多弁護士というくらいですので、クリスマスが大好きです。さて、我が国でも平成27年4月から「新しいタイプの商標」の一つとして色彩のみからなる商標が出願の対象になりました。それなりの数が出願されたのですが、色を特定の事業者に独占させるというのは影響も大きいので、特許庁に登録が認められた例はまだ少なく、トンボ鉛筆の消しゴム「MONO」(青・白・黒)、コンビニエンスストアのセブンイレブン(オレンジ・緑・赤)など少数です。
黒沢社長:そうなのですね。うちも出願した方がよいでしょうか。
賛多弁護士:そうですね。企業にとってブランド価値は重要ですから、それも考えられるところです。ただ、社長のケーキ店は黄緑一色なので、商標登録はハードルがさらに高いところもありますね。
黒沢社長:一色だとダメなのですか。
賛多弁護士:理屈ではダメということはないのですが、一色を特定の事業者に商標として独占させるのは色彩商標の中でもハードルが高いと言われています。ハイヒールの底を赤にしていることで有名な海外の有名靴メーカーが出願したのですが、特許庁は昨年拒絶査定をして、認めませんでした。
黒沢社長:あ、あの会社ですね。私も知っています。では、色彩商標は難しいとして、私のお店としては他に何かできることはあるでしょうか。
賛多弁護士:商標登録ができない場合は、不正競争防止法の適用を考えます。
黒沢社長:それはどういうものですか。
賛多弁護士:不正競争防止法という法律は、「包装」を含む他人の商品等表示として「周知」のものと同一であったり類似したりしている表示を使用することを禁止しているのです。
黒沢社長:なるほど。
賛多弁護士:「周知」という要件をみたすかどうかについても、単色についてはそれほど簡単というわけではないのですが、黒沢社長のお店については検討の価値はあると思います。
黒沢社長:はい。私のケーキ店がつくってきたブランドを守っていきたいと思います。
賛多弁護士:先ほど挙げた有名靴メーカーの色彩商標は、アメリカでは認められています。ほかにも、ドライクリーニング台の特殊な色の商標登録が認められた例もあります。いずれ日本でも認められるかもしれませんね。
黒沢社長:うちの商品も商標登録が認められるくらいに広く知られるよう、がんばっていきたいと思います。
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ブランドの保護には、商標法と並び不正競争防止法の適用を検討することになります。不正競争防止法については、訴訟にならなければ最終的に認められるかどうかがはっきりしないところがありますが、認められる可能性を勘案しつつ、警告等を行って、可能な限りブランドの価値を守っていくことになります。また、近年日本でも認められるようになった色彩のみからなる商標は、まだ登録例はそれほど多くはありませんが、今後、どのように使われていくか、注目されます。
以上
執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 竹内 亮