神戸商事(仮称)に、大阪国税局の資料調査課が税務調査にやってきました。
資料調査課というのは、「リョウチョウ」と呼ばれ、国税局のなかでも精鋭部隊が集められた部門です。
税務署を束ねる国税局の、そのなかでも選ばれしメンバーが集まる部門です。
国税局OBの話では、だいたい、「リョウチョウ」が入る場合は、“アタリ”をつけている、とのこと。
つまり、事前の下調べで、「ここは怪しい」というテーマを見つけて、それを狙いに来ることが多いのです。
なぜ、神戸商事(仮称)に、リョウチョウが税務調査に入ったのか?
それは、元役員による不正事件(横領・着服)があったからです。
そして、それは、地場のテレビ局、新聞もこぞって取材し、不正事実は、公衆の目に触れる機会が多くありました。
特に、不正事件は、狙われやすいと言います。
横領、着服というのは、色々なケースがありますが、簡単にいえば、会社の利益を、自分のものにしてしまう、
自分のポケットに入れてしまう、ということです。
こういう事件では、ある意味、会社は被害者ですね。
神戸商事(仮称)の場合もそうでした。
しかし、税務当局は、こういう事件について違った見方をします。
会社を被害者として見てくれないのです。
例えば、役員が着服して1億円をポケットに入れたとします。
そうすると、これは、本来、会社に入るべき1億円だったはず。
だから、会社は1億円を利益に計上しなければいけなかった。
でも、利益に計上していなかった。という論法です。
税務調査が開始してから1カ月後、
国税局側から提示された調査結果は、7年前にさかのぼり、指摘金額もかなりの金額になっていました。
通常、税務調査は、過去3期分を見られることが多いですが、本当に悪質であれば、過去7期までさかのぼることができます。
今回の件は、悪質だと捉えられ、7期前までさかのぼられました。
そして、高圧的な態度の調査官から、次のように言われました。
「国税局側としても、徹底した調査を行ってきており、調査結果には、自信をもっています。修正申告されてはいかがですか?もし、修正申告を拒否される、ということでしたら、我々としては、明日にでも更正処分をうつ準備をしています。御社の回答は、来週の月曜日までにお願いします。くどいですが、回答をいただけないようなら、我々はすぐに更正処分をうちますので・・・」
このように強い口調で、自信満々の口調で言われました。
しかも、早く!早く!と、急かしてくるわけです。
しかし、会社として納得できなければ、修正申告をしてはいけません。
そのときは、更正処分(更正決定)してください、と伝えるべきです。
修正申告というのは、会社が自主的に誤りを認めること、
対して、更正処分(更正決定)というのは、税務署が会社の誤りを正すこと、
この2つの違い、お分かりになるでしょうか?
国税局としては、手間をかけたくないので、会社に修正申告を勧めてきます。これを慫慂(しょうよう)と言います。
「修正申告しろ!」とは言えずに、勧めてくるわけです。
神戸商事は、「会社としては、不服なので、更正処分をしてください。」と繰り返し伝えました。
国税局とやり取りを繰り返すうちに、2つのことが分かってきました。
1つ目は.国税局が急かしていたのは、「時効」があったからです。
当初、国税局が「早く修正申告されては?」と再三伝えてきたのは、7期前の分が、時効になるからでした。
神戸商事が、この背景に気づいてからは、ゆっくりと、のらりくらりと国税局側とのやりとりを行いました。担当者の焦りがよく分かりました。
結果、7期前の分は、時効になりました。
2つ目は、国税局は、「更正処分」は出来る限りしたくないということ。
これまで、「国税局として、もう待てない!こちらも出るところに出る!」というフレーズを神戸商事は、何度も聞いてきました。
しかし、神戸商事も、修正申告をすることなく、のらりくらりと、ときに厳しく、国税局の主張を受け入れず、時間をかけてきました。
すると、国税局の態度が徐々にかわってきました。
当初、相当強気だったものが、だんだん、トーンダウンしてきました。
更正処分をするというのは、最終的には、国税局長の決裁まで必要とします。
そうなると、確実に勝てる勝負でないと進めないですし、しかも、相当な資料を準備する必要があるため、現場としては、できるだけ避けたい、のです。
さらには、国税局(税務署)には、異動があります。
異動は、毎年7月前半です。
異動前に、持ち越し案件はなくして、早く手仕舞いしてしまわないと大変です。
結果として、国税局が、指摘する金額も当初の半分にまで減り、「これで、修正申告してくれませんか?」という感じになってきました。
高圧的だった態度から、一点して、懐柔する方向に変わってきました。
これらの点から、私たちが知っておくべきことは、
「税務調査には時効があること」
「税務署は、更正処分は絶対にやりたくないこと」
この2つです。
国税局、税務署から高圧的に言われても、決してひるむ必要はありません。
神戸商事の顧問税理士さんは、国税局に対して強く主張することもなく、ただ、私たちと国税局の攻防を後ろから見ていただけでした。
神戸商事がこうした進め方ができたのは、私たちICOコンサルティングが持つネットワークで、国税局が何を考えて、どういう手を打てばよいか、アドバイスしてくれる元国税局のキャリアOBや、税法や税務理論に精通した税務署OBの存在があったからこそです。
読者のみなさまの会社で、税務調査対応でお困りであれば、ICOコンサルティンググループにお問い合わせ下さい。